マーク・ハーマン監督、ユアン・マクレガー出演といえば「ブラス!」。これを超えたかどうかは好みの問題もあるだろう。リアルなヒューマン・ドラマとは少しタッチが違うが、昔の映画も好きだという人にはこちらがオススメだ。
母のハラスメントが原因で愛する父を失い引きこもってしまった娘の唯一の楽しみは、父の愛したレコードたち、それを繰り返し聴くうちにレコードとソックリに歌えるようになってしまった。彼女の驚くべき才能を知ったレイ・セイは何とか彼女をステージで歌わせようと必死のクドキ、そして一夜限りという約束で幕は開く、、、。
うさん臭い芸能スカウト、レイ・セイ(マイケル・ケイン)に、リトル・ヴォイス(ジェイン・ホロックス)がジャブのように放つ「モノマネ」は、この映画がタダ終わるワケがないという予感でワクワク、そしていよいよ本番のステージ、往年の名歌手たちが憑依したかのような迫力でアッと驚かせてくれる。ビリー・ホリディで滑ってしまった前回のステージとはえらい違いで見ている貴方も気分爽快になること間違いなし。
レコードしか聴いていないのに、どうやってボディ・アクションや映画のセリフまで習得してしまったのか、そのあたりはファンタジー半分としてあまり突き詰めないほうが楽しめる。
登場するナンバーはライザ・ミネリの「キャバレー」エセル・マーマン?の「ザッツ・エンタテイメント」など、ジュディー・ガーランド「オズの魔法使い」やシャーリー・バッシーの「ゴールド・フィンガー」も登場するこのシーン以外にも、突然彼女が口走るマリリン・モンローの映画「お熱いのがお好き」からのセリフ(以上、要再チェック)などのサービスもあるが、1950年代のネタが多く若いかたにとってはやや古いかもしれない。
そんなこんなでステージは大成功。次の日にはウワサを聞いた大物プロモーターまで乗り込んでくるのだが、、、。
終わってみれば「一夜の夢」、全てを失いレコードや父の幻など彼女の「取り巻き」たちと訣別したリトル・ヴォイスが、吹っ切れたように表情までも一変させて清々しく登場。
彼女の素晴らしい才能こそが、実は引きこもり状態から抜け出す「足かせ」になっていたというオチ、爽快なエンディングだった。
マイケル・ケイン、リンダ・ブレシンらは主役をも喰ってしまいそうなほどの圧倒的な熱演、鳩を飼う青年ビリーというシャイな役どころで少し印象が弱かったもののユアン・マクレガーが抑えた演技でうまく絡み、ホロックスのステージ・パフォーマンスだけに終わらせずイギリス映画らしい厚みを堪能させてくれた。