輝くばかりのオレンジに近い赤をダンマ(仏教の本質)に、現代のシアトルにおける苦悩を青とした、統一感のある映像は、「シェルタリング・スカイ」とは異なる距離感をもつ美しさがある。最後、ラマ・ノルブ師が亡くなった後、母親が懐妊し、大きく膨らんだセーターの色は赤であり、少年ジェシーのジャケットは赤と青、父親は青とさせるなど、細微にわたって徹底しており、様式美さえ感じさせる。
ヘルマン・ヘッセの作品の内的洞察の1つの頂点である「シッタールダ」を絵にすると、このようになるのでは、と唸らせる作品であった。
絵本「小さなブッダ」の語りをもとに、世代を引き継ぐ師と弟子・親子の垂直軸と、選ばれた子供たち、その親である同世代の夫婦の水平軸から織りなす対話から、ダンマをシンプルに観客に示している。確かに物語としては平凡であるが、ダンマの基本的な概念はきちんと押えられている。
また、美しすぎる映像美に埋もれることなく、主となる俳優はもちろん、エキストラの人物の表情・視線さえも明瞭なアングルで撮られている。坂本龍一によるテーマ曲が最後の最後までリフレインし、エンドロールが終わった直後の最後のワンカットで見せる。監督の美学が完結した瞬間である。この最後を見届けなった方はおられるかと思う。