"Risk The Science and Politics of Fear"の翻訳本。
著者の基本認識は「現在は史上最も安全な時代である。なぜならこんなに平均寿命が長い時代はかつてなかった。」ということである。
その認識に基づき、テロ、死を運ぶ伝染病、環境を汚染する化学薬品、ネット上の小児性愛者など毎日新しいリスクが報じられている中で本当にそのリスクは恐れるほどのものなのだろうかということをリスク心理学の知見をベースに実例を挙げながら検証していく。たとえば、9.11後、飛行機が危険という認識から自動車の利用者が増え、それによって1年間で1500人以上の自動車事故の死亡者が増えたことなどを例証する。
そして、人間がこのような誤った判断をする背景には、マスコミを含めた人々の私利によるミスリードと、人間の感情と理性の関係が現在のシステムに適応し切れないという問題があるとする。
それらの記述は、人間がいかにリスク対し過ちやすいものであるかに関する面白いエピソードが多く、また書かれている内容も合理的なものが多い。その意味でよい本だといえよう。
ただ、この本を読んだ読者がリスクに関し完全に適切な判断をできるようになるかというと個人的には疑問を持っている。それぐらいリスク認識の困難性を克服する困難性は大きいのではないだろうか。逆にそれなるがゆえに世の中の出来事に理性的に対応したい人はまずこの本を読んでみることをお勧めする。