タイトルが示すように、ブラジル・リオでのピアノ・ソロ即興ライヴ。それも今年の4月の録音。
昔のような長大な演奏ではなく、近年のテスタメント等のように、各々が3〜8分台のパート1〜15に分かれ、ディスク2枚に収録されている。
キースのソロ即興ライヴ・アルバムとは30年以上のつき合いになる。70年代の諸作のような衝撃、新鮮さは薄れたとはいえ、キースの即興ソロ・ライヴ・アルバムは、演奏地の風土・文化に彼自身の人生の諸局面を重ね合わせ、その土地・時に彼が内なる感興に導かれるままにピアノという絵筆で描いた絵葉書のようなものだと私は思っている。行ったことがない土地でも、キースのフィルターを通して風光や色彩が伝わってくる嬉しい便りだ。
本作でも、例えばサウダージとでも呼ぶべき切なさを感じるパート7から、リオの街の快活さを感じさせるパート8へのスイッチにハッとさせられる。
本作はまた現代音楽風の曲が少なくて(パート1、10ぐらい)、アーシ―な曲や光る玉を転がすような輝かしいメロディーの曲(特にパート9、15は絶品)等、70〜80年代のキースを思わせる曲が多い。今世紀のソロ・ライヴ・アルバムで一番聴きやすい作品だ。これも南米と今のキースの内面の化学反応故だろう。
キースのソロ即興ライヴは未完の彼の人生絵巻だと思うが、本作はその中でも特筆するに値する1巻だ。