高橋の入院する病棟に新しく入ってきたのは、プロレスラーの白鳥。 肉体的“強者”であったはずの彼もリハビリにおいては自分よりまだ 下にいることを目の当たりにし、つかの間の精神の安息を手に入れ た高橋であったが、“ある事実”をきっかけに、彼の心は再び深い奈 落へ突き落とされることとなる…。
人は生まれた時から社会に組み込まれていて、社会に組み込まれ ている以上他人と比べられ、自分でもそれを比べてしまう運命にある。 だからこそ他人を目にすることによって生まれる、彼らへの優越感と劣 等感。 そのうす気味悪くてジメジメした感情は、桜木や流川といった超人的 なバスケットマンの住まう世界では描けない、また一つの「リアル」だ。
本作が主に扱うのは今のところ身体的な障害ではあるけれども、この “自分を他人と比較する病”への罹患に、健常も障害も大差はない。 それほどまでにそれは、自意識をもった人間にとって根が深い業みた いなもんだ。 その他人との差異を多様性という「武器」ととるか、動かしがたい冷徹 な「宿命」ととるか。それはこの巻での野宮と高橋のスタイルの違いと も合わさるところだろうけれど、それはあくまで「気の持ちよう」(=主観)の問題であって、でもその「気の持ちよう」こそがその人唯一のREAL(=現実)であったりする。
そうなんだよ。社会ってのはこちらが望んでもないのにいつのまにか立 たされるリングを用意する。でもそんな不可避なマッチメイクであっても、せめてドローには持ち込みたい。 それが、この巻を読み終えて思うこと。