著者は某所で本書での印税収入の少なさを愚痴っていたが、しかし私はタイトルと装丁が悪いと思う。劣情を刺激しないもん。しかも巻頭を飾る表題作が本書で一番面白くない! 編集者の責任もあるだろうけど、やはり著者の肩に力が入りすぎているんじゃないだろうか。昔だったら、「アカデミズムへのルサンチマン」なんて言われそうな……でもね、皆さん、この本は面白いですよ。
私としては、川上弘美論中の「黛まどかや水原紫苑や岸本葉子の書くものを、著者近影やテレビに出る姿と別個に、私たちは享受できるだろうか? 私は、できないと思う」(p172)、「けれど、こう集団催眠にかかったように、大勢が容姿に感じる魅力と作品の力とを混同したりするのは、やはり間違いだ」(p173)というような切り口を、もう少し深めて欲しかった。もちろん容姿に限らず、作家という存在がある時期まで持ち得たロールモデルとしての魅力や、その終焉(たぶん……)にまで踏み込んで。そうなるとメディアや大衆社会の問題を扱うことになるんだろうけど、私は小谷野氏には適任のような気がする。あと、蓮實重彦をどう評価するのか、聞かせて欲しい。
ところで「恋愛と論理なき国語教育」中の、「これらの教科書採用作品は、全体として、『死』について考えさせたがる傾向がある」(p85)という件りには、アッ、と思った。すると小川洋子『
物語の役割』なんてのは、正に学校教育的ってことか? それとも学校教育的な「死の表象」を踏み越える危険性を秘めているのか?