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ラー油とハイボール―時代の空気は「食」でつかむ (新潮新書)
 
 

ラー油とハイボール―時代の空気は「食」でつかむ (新潮新書) [単行本]

子安 大輔
5つ星のうち 3.6  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

「食」に関する様々な現象を読み解くと、人々の心理的変化が見えてくる。ハイボールはなぜ大ヒットしたのか。「食べるラー油」を生み出した、「ずらし」の発想とは何か。飲み放題で店が儲かる仕組みとは----飲食業界のコンサルタントとして活躍する著者によるクリアーな分析から次々浮かび上がるのは、あらゆるビジネスに通じるロジックと発想法である。おいしくておもしろい、舌と脳に爽快な刺激を与える一冊。

内容(「BOOK」データベースより)

「食」に関する様々な現象を読み解くと、人々の心理的変化が見えてくる。ハイボールはなぜ大ヒットしたのか。「食べるラー油」を生み出した、「ずらし」の発想とは何か。飲み放題で店が儲かる仕組みとは―飲食業界のコンサルタントとして活躍する著者によるクリアーな分析から次々浮かび上がるのは、あらゆるビジネスに通じるロジックと発想法である。おいしくておもしろい、舌と脳に爽快な刺激を与える一冊。

著者について

1976(昭和51)年生まれ。東京大学経済学部卒業。博報堂勤務を経て2003年、飲食業界に転身。2005年、共同で株式会社カゲンを設立し、取締役就任。飲食業界のプロデュースやコンサルティングに広く携わる。著書に『「お通し」はなぜ必ず出るのか』がある。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

子安 大輔
1976(昭和51)年生まれ。東京大学経済学部卒業。博報堂勤務を経て、飲食業界へ転身。株式会社カゲン取締役。飲食業界のプロデュースやコンサルティングに広く携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

About this Title

1 ハイボールがヒットした本当の理由

二番手に注目せよ

一ヶ月に四万六百円。
これは何の数字だかわかりますか。実は、二〇一〇年の男性サラリーマンの小遣いの平均金額です。
新生銀行グループの新生フィナンシャルが毎年実施している「サラリーマン小遣い調査」によれば、二〇〇七年には四万八千八百円だったものが、二〇〇八年は四万六千三百円、二〇〇九年には四万五千六百円とじわじわと減り続け、二〇一〇年には一気に五千円も少なくなってしまいました。
この数字は当然のようにサラリーマンの昼食やアフターファイブの外食、すなわち「飲み」にも大きな影響を与えています。
昼食代の平均は、二〇〇七年は五百九十円だったものが、五百七十円、五百九十円と推移し、二〇一〇年には五百円と、ぴったりワンコインになりました。
夜に外食に行く頻度も見てみましょう。二〇〇七年には一ヶ月平均三・九回だったものが、三・八回、三・三回と年々少なくなり、二〇一〇年には二・九回と、ついに十日に一回というペースを割り込んでしまったのです。
居酒屋でちょっと一杯ひっかけるというのも、サラリーマンにとっては年々貴重な機会になってきていることがデータからもわかります。
居酒屋というものは生活に必須ではないかもしれません。けれども、男性サラリーマンに限らず、仕事をしている多くの社会人にとっては、同僚や友人とのコミュニケーションのため、あるいは日頃のストレス発散や生活の潤いのために、居酒屋は大切な存在であることもまた間違いありません。
ここでは、そんな居酒屋で皆さんが普段何気なく頼んでいるであろうお酒について、少し考えてみたいと思います。
最近では「若者のビール離れ」が話題に上ることもありますが、そうは言っても、依然乾杯の定番がビールであることには変わりありません。
ここで注目してみたいのは、ビールの後の二杯目に何を飲むかという点です。
最後までビールで通すビール党もいるでしょうし、ビールで喉の乾きを癒したところで今度は味わいを楽しむために日本酒を飲むという人もいるでしょう。あるいは、居酒屋では「ウーロンハイ」に移るという人も少なからずいます。
ウーロンハイとは焼酎をウーロン茶で割った飲み物で、特に中高年男性に人気があるようです。人の味覚はまちまちですから、あまり乱暴なことは言えませんが、私自身はウーロンハイというものは、決しておいしいとは感じません。周囲に聞いてみても、似たような印象を抱いている人が多いので、必ずしも偏った意見というわけでもなさそうです。
では、なぜ一部の中高年男性はウーロンハイを飲んでいるのでしょうか。
一つには、飽きることなくダラダラと飲み続けられるからという理由がありそうです。
おいしいからという視点で選んでいるわけではなく、酒を飲んでほろ酔いになりたいから、あるいは宴会の間をウーロンハイで通したいから、というのが実は支持されている要因のような気がします。ある種の「惰性飲用」とでも言えるかもしれません。
ウーロンハイ以外にも、焼酎の水割りやレモンサワー、あるいは近年人気が再浮上してきたホッピーなどにも似たような飲用動機を感じます。
また、その惰性と合わせて、少しでも体への負担の少ないものを飲みたいというもう一つの理由もありそうです。ウーロン茶は「カロリーゼロ」ですし、ダイエットに良さそうな、少なくとも悪くはなさそうなイメージがあるのでしょう。同様に、レモンサワーもビタミンが取れそうなので、体に対するプラスの印象があるのだと思われます。
あるいは、ホッピーの場合は「プリン体ゼロ」という商品特徴を自らうたっているので、それが健康を気にする中高年男性の心を掴んでいるということがありそうです。
つまり、居酒屋で二杯目の注文として頼む人の多いウーロンハイ、レモンサワー、焼酎水割りなどは、「おいしくて好きだから」という積極的な理由よりも、「飲み飽きないから」そして「体に悪くなさそうだから」という消極的な理由で選ばれていると考えられます。
その意味では「ビールの後の二杯目」というポジションには、生活者から強く支持されているアイテムがあるわけではなく、マーケティング的にはチャンスが隠れていると言えるでしょう。ここに積極的に注文したくなる商品を投入すれば、その大きなマーケットを捉えることができるかもしれません。
ちなみに私の知っている飲食店では、自家製の生姜シロップを使った「生姜サワー」が大人気です。味に対する評価が高いのはもちろんですが、「自家製」という事実に由来する温かさや希少性、そして生姜が持っている体を守ってくれそうなヘルシー感によって、ファンになる人が多いようです。これはその「二杯目のポジション」をうまく獲得した事例と言えるでしょう。
このように「ビールの後の二杯目」に着目してみると、この数年話題を集めている「ハイボール(ウイスキーのソーダ割り)」の違う側面が見えてきます。
ハイボールがヒットした理由としては、国内のウイスキー市場をリードしているサントリーの営業戦略やマーケティング戦略が優れていたからとされたり、あるいはビールよりも安いその価格設定が不況の時代に支持されたからと解説されたりしているのを、よく見かけます。
これらがその理由であることは間違いないのでしょうが、それに加えて、「ビールの後の二杯目」という長らく目立った動きがなかったポジションに、活きの良い新参者として入り込んだからというのも、ヒットの大きな要因であるように思います。
居酒屋のお客は「ビールの後に何を飲もうか。レモンサワーもウーロンハイも焼酎水割りも、どれもピンと来ないなあ。あっ、ハイボールがあるぞ!これにしよう」というような心理で注文をしているのではないでしょうか。
私たちはつい「一杯目」「一番手」に注目し、そこを目指すことに全力投球しがちです。しかし、二番手、三番手だからチャンスがないというわけではありません。ハイボールのヒットやウーロンハイの根強い人気は「二番手市場にも鉱脈はある」ということを示唆しているのです。

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