まず、リアル・ドールと聞いて、アンなことやソンなことを想像しておりました。(笑) でも、エッチなシーンは全くありません。
主人公のラースは、シャイどころの話ではない。でも、彼が限りなく穏やかで、限りなく心の優しいピュアな青年。ラースが極端に人見知りするのは、母の死に責任を感じ、それがトラウマになって心を閉ざしているためだ。
人と接触しても、その人がいつか自分から去ってしまうかと思うと怖くてたまらない。恐れが妄想を呼び、心の病が人形を擬人化したのだ。ラースにとって、リアルドール・ビアンカの存在は性的欲求を満たすものでも、寂しさを紛らすためのものでもない...。
本人は気付いていないが、ラースは周りから愛されているんだよね。周囲の人々も心底理解し、受け止めている。ビアンカを恋人と認め、パーティに招待し、仕事まで世話する。
ラースを演じたライアン・ゴズリングは、文句なしのはまり役。口数は少ないものの、無垢な心と、ゆれ動く感情と意思を言葉以上に表現している。義理の姉カリンを演じるエミリー・モーティマーも印象深い演技を見せています。特に、かすれた声でラースを叱責するシーンは感涙ものでした。印象的なシーンの多い映画でしたが、個人的にはラースがテディ・ベアを蘇生させるシーンが一番好きかな。
コミカルな前半から、どんな着地の仕方をするのか心配だったのですが、見事なラストに落ち着きます。人形との恋という突飛なスタートから、小さな町のヒューマニズムを経由して、生と死をみつめた真摯なドラマ、主人公の心の再生というゴールへ至る道を、ちゃんと地に足をつけて描き切ったことを賞賛したい。