私もラヴクラフトの小説は大好きなのですが、一番にお薦めしたいのはこの第4巻ですね。 初期、中期の傑作、そして彼の最大の長編にして、怪奇科学ロマンとしての到達点“狂気の山脈にて”も収められており、加えて彼の作家としての資質をよく伝える“怪奇小説の執筆について”というエッセイまで付いていて、短編集として満足のいく内容になっています。 それにしても掲載されているラヴクラフトの写真―どれを見ても“帝都物語”の嶋田久作さんそっくりー。
なんといっても読んでいただきたいのが中篇 “宇宙からの色”−高校生のころ、何気に読み始めて止まらなくなり、一気に読了してしまったことを今でもよく覚えています。 あのクライマックスのただならぬ盛り上がり方は良質のスリラー映画を見ているときに得られる快感によく似ています。 今こうして読み直してみると、どれもこれも非常にオーソドックスな作劇法ながら、読者の心を捉えて話さない彼の話芸に感心してしまいます。 “冷気”や“ピックマンのモデル”といった短篇を読んでいただけばわかると思うのですが、いずれもじわじわと恐怖を盛り上げて、驚愕の結末へ(ユーモア小説で言えばオチーへ)もっていくという構成においては一貫しています。 スタイルがシンプルな場合、語られている内容、そして語り口の巧拙がはっきり出てくるものです。 そして文章は非常に硬質で会話が少なく、科学や民俗学的な記述も適度に盛り込まれており、独特の高級感さえ漂っています。 やはり20世紀怪奇小説の古典として読み継がれて行く作家だと思います。