なんだかアマゾンのカスタマーレビューを見る限り、
大瀧啓裕氏の翻訳は「悪い」というのが定説のようになっているようですが、
僕は全然そんなふうには感じません。
3巻から始まって4巻5巻と、氏による翻訳が続いているわけですが、
いったい何がいけないのか、たしかに文章はだらだらと歯切れが悪く、
晦渋で難解なところがあることもたしかですが、
その文体すらおどろおどろしい文章だからこそかもし出せている恐ろしさ、
というのがあるのではないのでしょうか?
僕は例えば(有名なのでとりあえず名前を挙げるだけです。他意はありません!)
柴田元幸氏がここにあるどの話を翻訳したにしろ、
この人の翻訳ほどにはそのイメージを翻訳することはできないのではないか、
とぼんやりと確信しています。
大瀧氏の翻訳には、他の翻訳と参照したことがないので比較はできませんが、
ちょっと頭のおかしい人が一心不乱に書き付けたような混乱したような文章に
まざまざと見える箇所がよくあります。
その箇所の異常ともいえる描写、たとえばこの巻だと、
「死体蘇生者ハーバード・ウェスト」の野戦病院のシーン、
「魔女の家の夢」の主人公が夢から逃れようとするシーンの、
執拗なまでのねちっこい描写は十分翻訳者の責を果たして、
より以上のものがあるのではないか、と思わさせられます。とにかく悪くない翻訳です。
単純に文章が難しいから、翻訳が悪いんだと決め付けてはいないでしょうか?
文体の難しさ、テキストを読むことで得られる恐怖の色合いを翻訳するのも、
翻訳家の大切な仕事だと思います。
ただこの巻は、他の巻からもれた話をとりあえず一括りにしたような印象が強いので、
星は1つ減らさせてもらいました。