もちろん水の戯れも良いしその他の曲も良いです。たっぷりの響かせ、たっぷりと歌ったラヴェルです。ピアニッシモはかすれず、フォルティッシモは破れない、こういうのをたっぷりとした響きである、と教えられます。フランソワのスケールの大きさに涙するばかりです。
1960年代前半で、フランソワの体調がおかしくなる前の録音なので、テクニックにも破綻がないように思われます。厳密な意味で、というより、あら捜しすればそれはわかりませんが、私にはフランソワに関してはそういうことは不必要だと思っています。
全集の1では、あえて『鏡』をお勧めいたします。第一曲『蛾』の第一音のなんと丁寧な響きでそのまま引き込んでくれることか。ギーゼキングのさらさらしすぎた弾き方とは違います。『道化師の朝の歌』では、三連符のところではテンポを動かしてはいますが、それが却ってせかせかしない動きというものを表現していて、これもフランソワの世界に引き込まれてしまいます。その他、聴き所はいっぱいあります。
ただし、いくつかあるフランソワ名物の内の一つ、譜読みの間違いは第一曲にも健在でした。再現部の約11小節くらい前の小節で、左手AS-ASの八分音符の分散オクターブを、その一オクターブ半上のF-Fと弾いているのです。どうやら、ヘ音記号を見落としたのかな??さもなければ、フランソワの使用楽譜にはト音記号のままだったのか、それとも、「作曲家」フランソワの感興がそのように弾いてしまったのか、謎です。この点を赦せない方は、この演奏の評価は低く見積もると思います。私はこのことで、曲の流れを阻害されませんでした。だから星が5つになってしまうのです。
フランソワの幻想の世界をお楽しみください。