このCDの帯には、クリュイタンスの「ダフニスとクロエ」を評して、「気品に満ちた」、「しなやかで繊細なニュアンス」、「精妙で瑞々しい感性に満ちた響き」といった言葉が踊っている。
私も、今回の一連の再発盤を聴くまでは、1964年の東京文化会館での、ライヴならではの凄まじいとしか形容のしようがない「幻想交響曲」の演奏を例外中の例外として、クリュイタンスの演奏には、同じような感想しか抱いてこなかったことは、別のレビューにも記したのだが、この「ダフニスとクロエ」も、そんな通り一遍の美辞麗句だけで片付けるような演奏ではないと、断じて言える。
このCDのライナー・ノートを書いている評論家の松沢憲氏が、冒頭に記したようなクリュイタンスの演奏の特徴を評価しつつ、それ以上に、「情熱のたぎりや感情の爆発的な高ぶり」、「ダイナミックでエネルギッシュなドラマを創っている」、「きれいごとでは終わらない激しい衝動がはじけている」ことなどを絶賛しているのだが、この再発盤を聴いて、私は、100%、松沢氏の見方に賛同するのだ。
ちなみに、このクリュイタンス盤に対して、近年の名盤と評されているのが、デュトワ指揮モントリオール響盤なのだが、実際に聴いてみると、むしろ、デュトワ盤の方が、冒頭のキャッチ・コピーには、より相応しい演奏といえるかもしれない。しかし、これは、デュトワの演奏に常に感じる物足りなさでもあるのだが、デュトワの演奏は、終始、クールで、クリュイタンスの演奏に感じるような「熱い情熱のほとばしり」が感じられないのだ。
オーケストラと全合唱が一体となった、「序奏〜宗教的な踊り」や「間奏曲」での圧倒的な高揚感、終曲の「全員の踊り」での凄まじいまでの喜びの爆発は、絶対にデュトワの演奏からは聴き取れないものであり、優雅さだけが持ち味ではないクリュイタンスの真価に触れられる最適なアルバムの一つと絶賛したい。