フランス芸術にはかならず「エスプリ」という言葉がつきまとうが、
フランス音楽にも同じことがいえる。
ラヴェル、ドビュッシー、フォーレの音楽には、あきらかにエスプリが根付いていて、
芯の強い明晰さとラテンの明澄さというものを感じる。
このトリオ・フォントネによるピアノ三重奏曲は、いずれの作品においても、
大変に優れた演奏にしあがっていることを特筆したい。
しかし、一方で、このトリオのメンバーはドイツ人たちであり、
また比較的若い世代の音楽家たちということもあってか、フランス的「渋み」というものとは
かけ離れた演出を行っていることにも注意が必要である。
つまり、あくまでも明るさに彩られた繊細な音に紡がれた美音と、
輝くような表現の清らかさを際立たせているのである。
それでも、ドイツ音楽とは全く違うフランス室内楽の妙味と楽しさとを、
ひとまとめに鑑賞できる絶好のCDであることにはまちがいない。
皆さんに大いにお勧めできる名盤である。