前著、ランチェスター思考'Tが、ランチェスターの法則を基にわが国で開発された、ランチェスター戦略(セールス・マーケティング戦略)の入門・解説書であったのに対し、本編はアメリカ陸軍の指揮官マニュアル(FM-6.0 )をベースにした、経営戦略・戦術の教導書である。おそらくわが国では初の試みであろう。筆者が軍事(自衛隊)に深い関心を持ち、しばしばその教育に招かれるほどであることと無縁ではない。
わが国の意思決定は政治であれ、軍事であれ、経営であれ、果敢な決断よりは合意形成に力点を置く傾向が強い。最近のように経営環境がめまぐるしく変わる時代、これではタイムリーな手が打てない。また合意形成は必ずしも論理的ではない。そこで喧伝されているのがロジカル・シンキングである。MBAはいわばそのホームグランドと言ってもいい。しかし、このロジカル・シンキングは実務推進に際して、“机上の空論”化しやすいところがある。
米陸軍の指揮官マニュアルを援用しながら、著者が訴えようとしていることは、過度なロジカル・シンキングをあらため、経験とそれによって培われる感性で、直感的・即応的な経営判断を行おう、と言うことである。
前作同様経営学泰斗の一言や、経営上の経験談(特に失敗談)、軍事作戦上の事例などを随所に挟み、飽きることなく最後まで読ませる。また、日ごろ忙しい経営者・管理者に読みやすい形式で記述されていることも、即戦的な経営指南書と言える。