ジャン=フィリップ・ラモー(Jean-Philippe Rameau 1683-1764)はフランスの作曲家。音楽理論の研究家としても高名で、著書に「和声論(Traite de l'harmonie)」、「音楽理論の新体系(Nouveau systeme de musique theorique)」などがある。イタリア・オペラに人気があった当時、彼の作風は作為的に思われ、ルソー(Jean-Jacques Rousseau 1712-1778)らに激しく攻撃されたとされる。
このアルバムは、フランスの指揮者マルク・ミンコフスキ(Marc Minkowski 1962-)が、自身によって設立したピリオド楽器による合奏団、グルノーブル・ルーヴル宮音楽隊(Les Musiciens du Louvre. Grenoble)を指揮して、ラモーの17の管弦楽曲を抜粋・収録したもので、バレエや歌劇の劇中の音楽などによって構成される。2003年録音。
サンフォニー・イマジネールというタイトルが付いているが「空想の交響曲」といった意味だろう。実際、「交響曲」というネームが持つイメージには、「純粋な音楽理論」「対位法やソナタ形式を発展させた純器楽による音楽」といったもので、そう考えると、ハイドン、モーツァルトなどによる交響曲の台頭は、言い換えれば機会音楽的なバロック音楽の終焉とも見て取れる。しかし、そう言い切れるだろうか?
・・・それで、このアルバムの意図は、バロック音楽の中に、すでに確かに存在していた交響曲的要素を、あらためて明瞭に示し、交響曲がバロック音楽を葬った象徴などではなく、むしろその一要素が発展したものであることを示そうとしているに違いない。且つそのような「音楽に内在する要因」をいちはやく理論として体系化し、実践した作曲家がラモーであったということを。
実際、ここに収録された楽曲を聴いていると、管弦楽曲としての様々な完成度の高さ、必要要素の充足を感じさせてくれる。ラモーにはメロディーを案出する才があり、的確なセンスがあり、フランス的な機知や気品も携えていた。そして、理論の枠で編み出したものが確固たる音楽となっている。私は以前タローが弾いたラモーのクラウザン曲の、調性を踏まえた展開力、スケールの大きいリズム感にベートーヴェンに通じる熱と迫力を感じたものだが、この管弦楽曲でもあきらかな形となって提示されていると思う。
ミンコフスキは用心深いテンポ設定をしているとも思う。バロック的だが、バロック調になり過ぎないセーヴがあり、ドラマティックなフレーズや打楽器の効果を用いて、曲想に幅を与え、ややロマンティックな領域に進んでいる。それがラモーの作品の象徴的な「あり様」に重なって思える。