近頃公開されたディズニー映画の「ラプンツェル」を4才の娘に見せる前に、グリムのオリジナルの童話を読み聞かせたいと思って購入しました。バーナデッド・ワッツのほのぼのとした、やさしい絵はいいですね。細部までよく描きこまれています。ゴテルおばあさん(魔女)もあまり怖くないし、ラプンツェルはかわいらしい、ただ王子様があまりかっこよく描かれてはおりません。(娘も王子様の絵に文句を言っていました。)バーナデット・ワッツはケント州在住の英国人、挿絵で特筆すべきは、草花の描写が素晴らしく美しいことです。緻密で美しい彩色で野の草花や庭園の様子を描き、おとぎ話の田園風景が展開します。丹精込めた庭の草花を写生するワッツの姿が想像されます。
本の内容はほぼグリムの原話のままです。ラプンツェルと育ての母(ゴテルおばあさん)の関係は胸に迫ります。「魔女」とされているゴテルおばあさん、ちっとも悪くないんです。最初に庭に無断で入って野菜の「ラプンツェル」を盗んだのはラプンツェルの父、その罪を贖わせるために生まれた赤子を要求したけれど、それも生みの両親の了解を得たうえでのこと。可愛らしい女の子を大事にかわいがるゴテルおばあさん。その場面の絵のゴテルおばあさんが本当に優しそうで、いい顔しているのです。愛情あまって、12才になったラプンツェルを自分のものだけにしておきたいからと高い塔に幽閉するゴテルおばあさん。そのうち、外部から王子という闖入者がやってくる訳ですが、ラプンツェルが先にゴテルおばあさんを裏切り、王子を契りをかわしたうえ、(この辺はもちろん絵本では触れていませんよ!)逃げようと画策するのですね。当然ゴテルおばあさんは激怒。ラプンツェルの長い髪を切って荒野に追放するのです。かわいさあまって憎さ100倍、といったところでしょう。本の裏表紙、ゴテルおばあさんと小さい頃のラプンツェルの絵が、母と娘の蜜月時代を象徴するような絵で、私は娘を持つ母の身として切なくなってしまいました。優しいゴテルおばあさんの描き方、かっこよくない王子様、これはもしかして意図的?と思わせる意味深い一冊です。