ラフ集合は1982年にポーランドのZ. Pawlak教授によって提案され、その応用のルール抽出も同教授により提案されています。ラフ集合では、同値関係や類似関係などによる集合を知識と考え、与えられた集合をこの知識で表現するのに、2つの近似の方法(ラフ近似)を提案しています。この概念を通常のデータ解析に応用した研究がなされています。また、不完全情報を持ったデータベースの検索でも用いられています。
本書は、2002年12月に開催されたラフ集合理論の研究グループとデザイン系の感性工学の研究グループとの共同によるワークショップを契機に企画されました。ワークショップにおける交流の中で、今後の応用での発展が期待されるラフ集合の書籍は海外ではすでに多数出版されているにもかかわらず、日本語の書籍はまったくないことが話題になり、その出版を強く希望するラフ集合の応用側の感性工学研究グループが中心になって企画立案されました。したがって、本書は日本で最初の日本語で書かれたラフ集合の本となります。
本書の大きな特徴は、ラフ集合の応用の視点からの入門書、事例書、理論書を一冊にまとめたところです。つまり、第1部の入門・事例編としての「感性工学のためのラフ集合」と第2部の理論編としての「応用のためのラフ集合の理論」とで構成されています。その違いを明確にするために、文体を両者で異なるものにしています。また、ラフ集合を理解するためには、実際に身の回りのテーマについて使ってみるのが近道です。しかし、ラフ集合の計算はサンプル数が多くなるとパソコンの助けを必要とします。そのため、本書で使われているソフトウェアについては、入手を希望する読者がインターネットから購入することができる仕組みになっており、その使いかたと入手方法は第2章で紹介してあります。
数学的な知識に自信のない大学生や社会人の読者は、前半の入門・事例でラフ集合について十分理解できるように編集しています。
次に、本書の各章の具体的な内容について記します。第1章は、ラフ集合の考えかたを数学的な用語や表現をできるだけ抑えて、平易に解説しています。ラフ集合の概念的な考えかただけを知りたい読者は、この章を読むだけで十分理解できるように書かれています。次の第2章は、ラフ集合の使いかたを実際に体得したい読者に向けて、前述したラフ集合のソフトウェアの使用法について解説しています。とくに、卒業研究や修士論文作成でラフ集合を応用したい学生には最適です。 第3章から第6章は、感性工学研究グループが行った事例研究を紹介しています。ラフ集合の応用に興味のある読者は、具体的な理解が深まると考えます。それ以外の読者にもラフ集合を深く理解するための良い例題になると思います。
第2部の第7章と第8章は、ラフ集合理論の第一線の研究者によって書かれた理論編です。専門用語を用いながら、できるだけ平易に解説してあります。とくに、第7章はラフ集合の導入となる基礎的な考えかたを解説しています。この章を理解することで、次の第8章の内容がよりわかるように配慮してあります。
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