このラフマニノフの「交響曲第2番」は、いわゆる万人向きの名曲ではなく、聴く人を選ぶ典型的な名曲といえるだろう。実際、ベートーヴェン、ブルックナー、マーラーなどの、男性的、あるいは、壮大な曲を好まれる方は、退屈される可能性大なので、この曲には手を出されない方がいいかもしれない。
「遅れてきたロマン派」ラフマニノフの、全篇に濃厚なロマンティシズムを湛えた名曲「交響曲第2番」は、特に、第3楽章アダージョが全曲の白眉であり、聴く者の胸をえぐって、切々と訴え掛けてくるような哀愁漂う美しい旋律は、ラフマニノフならではの魅力に溢れている。ただ、この交響曲は、第1楽章と第4楽章のクライマックス以外は、このプレヴィンの完全全曲版で、1時間以上にわたって、なだらかな曲調のロマンティックな音楽が延々と続くような曲なので、合わない人には、単なる、生温く、長い、退屈な音楽にしか聴こえないと思うのだ(なにせ、あの個性派で鳴るゲルギエフでさえもが、この曲の枠の中に、大人しく納まった演奏をしているのだ)。
そんなラフマニノフの交響曲に、プレヴィンほどベスト・マッチする指揮者はいないだろう。プレヴィンは、最強奏でも、決してオーケストラを煽り立ててガンガン鳴らすような人ではなく、美しく、繊細で、まろやかな演奏をする人であり、曲によっては、逆に、その穏やかさを物足りなく感じてしまうことも多いのだが、ラフマニノフの曲は、まさに、プレヴィンのような人を、理想の演奏家として求めているのだ。
ちなみに、プレヴィンには、この1985年録音の新盤の外にも、ロンドン交響楽団との2枚の旧盤があり、1973年録音盤は、現在も販売されている。さすがに、私も、この曲を同じ指揮者で2枚買う気はしないので、比較試聴はしていないのだが、評論家諸氏の評価では、どちらも、甲乙付けがたい名盤中の名盤とされている。