著者の浅井隆氏は経済ジャーナリストで、近年、経済予測を著作として世に送り出されていますし、投資指南もされているようです。私は浅井氏を本書で知ったので、他の著作の内容は存じ上げません。一方のラビ・バトラ氏はインド出身の経済学者で、米国サザン・イリノイ大学で博士号を取得し、ソ連崩壊や日本のバブル崩壊等の経済予測を的中させた伝説的な経済学者です。
バトラ氏が瞑想を好むことは有名で、2週間で完成させた博士論文も瞑想によって構想を得たと自著で述べておられます。そのバトラ氏と非常に共通する予測を独自に出している浅井氏も常識では図れません。しかし、経済予測が常識的ではまったく的中しないことも事実で、常識的でないけれど的中実績がある人々の経済予測と、無難だけれど当たらない予測のいずれかを読者は選択する必要があります。本書で展開される経済800年周期説や社会循環の法則、30年周期説は既存の経済理論とはまったくかけ離れており、世の経済学者の常識からは完全に逸脱しています。しかし、経済学は現実の経済活動を観察し、新しい動向を解説する後付けの学問ですから、本書を否定する材料を持ち合わせません。本書の正否は時間のみが証明します。読者に必要な前提はそのぐらいでしょう。
個人的には、バトラ氏の提唱する経済民主主義に興味を覚えます。これは資本主義と民主主義に代わる新たな社会・経済体制の一案です。民主主義はチャーチルが「民主主義は最低だが、他の社会体制よりはましだ」と喝破したシステムですし、資本主義も万能ではありません。現在、バトラ氏のように一つの新たな経済システムを提案できる経済学者は稀です。その部分は一読の価値があります。本書の他の部分は読者がそれぞれに採用の可否を判断すればよいと思います。私には本書の最後に提案された当面の投資戦略指針が勉強になりました。