私は、もとはビートルズとウィングスのレコードやビデオを新宿まで買い漁りに行くような音楽オタクだった。ある時、シネクラブを通じて「ラトルズ」を知った。イベント上映だったかでこの作品を初めて観た時、とてつもない笑撃を受けた。確か中学生だったと思う。そして当然のように、フライングサーカスに魅了され、テリー・ギリアムやエリック・アイドルの作品に傾倒していった。ビートルズのパロディ作品「ラトルズ」は、1980年代当時に発売された1万5千円以上の高額なセルビデオを近所のレコード屋から取り寄せて、これを高校や大学になっても擦り切れるくらい毎日観たものだった。そのDVDが廉価で発売されていたことをつい最近知った(遅い)。早速買い求め、商品が届いたその日に、わくわくと青春時代を懐かしみ2回も連続で観てしまった。感想は少しがっかりしてしまった。理由は単純。日本語字幕の訳者が、余りにも英語をストレートに訳し過ぎていたからだ(英語字幕も付けていただけるとありがたかった)。今も手元にある当時のセルビデオ版の翻訳者の日本語能力や笑いのセンスと比べると10分の1以下の実力しか感じない字幕だ。英語翻訳としては高得点かもしれないが映画字幕として陳腐なのだ。失礼ながらこの訳者はビートルズの歴史や映画作品、モンティパイソンやサタデーナイトライブの世界観を知らないままに、ただ直訳しただけなのではないかと勘ぐってしまう。スチュワートとレポの部分やら、シェ・スタジアムとチェ(ゲバラ)・スタジアムの部分にしても、もうちょっと機転を利かせても良いだろうし、サッカーチームのエバートンという部分も、神発言とロッドスチュワートについての部分も、ボブ・ディランとティー(茶)からマハリシ・マヘシ・ヨギへと続く部分、ミック・ジャガーのラストの台詞にしても、SNLのギルダ・ラドナーの最初や最後のインタビュー部分にしても、とてつもない違和感を感じる。各所の笑いの伏線としても大切なせっかくのキーワードが、これらの字幕文字の薄っぺらい印象によって弱まってしまっている。恐らく初めてこの作品に触れた人には作品の面白さやモンティパイソンの魅力がちゃんと伝わらないのではないか。DVD化は個人的にはとても嬉しい事件だったが、訳者諸氏にもプロとして今一歩の精進を期待したいものだ。