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ラディカル・オーラル・ヒストリー―オーストラリア先住民アボリジニの歴史実践
 
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ラディカル・オーラル・ヒストリー―オーストラリア先住民アボリジニの歴史実践 [単行本]

保苅 実
5つ星のうち 4.9  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

 この本は、「歴史学研究再考」の本、といえるかもしれません。著者は、博士論文執筆のために先住民族アボリジニの村に滞在します。そしてそこで出会った、村の長老ジミー・マンガヤリ氏に受けた教え――歴史実践――に大きな刺激を受け、歴史とは何か、歴史家とは誰を指すのか、〈歴史への真摯さ〉とは何かを、深く考えるようになります。著者は、書き綴られることのないそして一見「神話」と思えるようなかれらの歴史物語りに接して、それを史実の確証のない「危険な歴史」として排除する現代歴史学の「権力性」を振り返ります。また、異文化の歴史を聴く事の難しさと、その上での「ギャップ越しのコミュニケーション」の大切さ・重要性に思い至るようになります。  こういった考察をへて制作された博士論文(英文)をもとに、日本語圏の読者に向けて、また日本の歴史学の現場にいるひとびとに向けて、再構成されたものが本書です。歴史学・人類学・ポストコロニアル理論に裏打ちされた明快な論旨、読者へのサービス精神にあふれた軽快な文章と工夫された構成は、もしかしたら日本の読者には「遠い他者」かもしれない、しかしともに現代を生きる豪州先住民族のひとびとの持つ歴史を知るにあたり、決してあきさせずに、読み進めさせてくれるでしょう。   題名の通り、これはまた、「オーラル・ヒストリー」という研究手法に関しての、挑戦的、かつ根源的な問いかけの書でもあります。参与観察・「インタビュー」ではなく、ともに歴史実践をしていく――「歴史する(Doing History)」――、「フィールドワーク形式」のオーラル・ヒストリーの提言です。  現代を生きる先住民族の歴史を聴くということは、そのまま植民地化の歴史といまにいたるその影響を学ぶということでもあります。豪州の「ポスト植民地主義」の歴史を、そしていまを、この本から知ることができます。「かれら」がイギリス人の植民地化をどう見ていたか、そのような「不道徳なこと」を行なう白人を、どう解釈してきたか、「かれらの植民地主義経験」が紹介されるのです。  そして、日本という地から研究者として村を訪れる著者は、自分が研究者とインフォーマントという権力構造のなかにいることに気づいています。英語や滞在先の村のクレオール語で聞き取った情報をもとに執筆された文章を、さらに著者が日本語に翻訳して構成するというときに発生する(かもしれない)「翻訳という問題」と、「かれらの歴史」を研究者である著者が書き綴ることの「解釈」「代理表象」の問題についても、注意深くあることを自分に、そして読者にも促します。  声の複数性、真理の不安定性などについて議論することをやめ、むしろそれを実際に実践に、本当に知を内破することをに挑戦したのが本書である(あとがき)。  本書を読み、多元的な声、多元的な歴史に出会うなかで、異文化の歴史を理解すること、それに真摯に聴き入ることの重要性を、著者とともに考え・実践していってほしいと願います。

内容(「BOOK」データベースより)

先住民の多様な歴史群を、ポストコロニアル理論を経たいま、排除・包摂しない歴史の多元化が求められている。異文化の歴史を聴き、「通文化化の歴史学」を大胆かつユーモラスに展開。

登録情報

  • 単行本: 336ページ
  • 出版社: 御茶の水書房 (2004/09)
  • ISBN-10: 4275003349
  • ISBN-13: 978-4275003348
  • 発売日: 2004/09
  • 商品の寸法: 20 x 14.2 x 2.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.9  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
精霊や神が跋扈する世界を、我々は神話と解釈する。
確かに大きな歴史というテーマに疑問符が付けられて久しい昨今だが、
アカデミックな歴史学では未だに神話は歴史であるとは認められない。

本書はそのような歴史学のあり方に大きな価値転換を促す。
アボリジニの人たちが生きている「歴史」。
それはドリーミングが世界を作り、蛇が洪水をおこす。
しかも、一つの歴史ではなく矛盾した歴史が共存している。

彼らの歴史をお馴染みの相対主義的な見地から語るのでもなく、
神話に回収させるのでもない、新しい歴史学。
その可能性について本書は模索している。
筆者の早すぎる逝去が残念でならない。
このレビューは参考になりましたか?
11 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By daepodong VINE™ メンバー
形式:単行本
 師?のテッサ・モーリス=スズキ氏の著作と比べても勝るとも劣らないインパクトのある書物である。
 本書では、第一章に著者自身の学問的アプローチに対する批判的考察がなされており、最終章では出版に際して実際に巻き起こった賛否両論が記してある。著者が自らの学問的立場に対して、その弱点も含めて十二分に自覚的であったことには特に注意を払わねばならない。

 学問的アプローチについて評するならば、従来の「参与観察」を否定し、生活を共にしてみる、そして彼らの「共同幻想」を受け入れる(というより、信じる)という歴史アプローチはまさに画期的なものだ。しかし、この本の真価はその新しいアプローチを提唱したことではない。こうして得られたアボリジニの「歴史」を「神話」と捉えるだけでは、知的コロナイゼイションという旧タイプの文化人類学と変わりがない、と著者は主張する。これを「歴史」として受け入れるためには「そういう考え方もありますね」と認める「文化相対主義」では十分ではなく、「信じる」ことができなければならない、という視点こそが、この本で打ち出された一番の功績だとわたくしには思われる。

 どうしたら「信じられる」のだろう? 著者はアボリジニとの共同生活を通じ、そういった「歴史観」を持つのが自然であり、かつ生活に有用な環境に身を置いていた。自分と異なる歴史観を持つ方々のそれを理解するためには(例えば「自虐史観」と「修正主義」のあいだ)、決してアタマでは理解できず、もっと肉体的な面も含めた濃厚な接触や共同生活が必要かもしれない、という可能性を示している。

 オーラル・ヒストリーに、その限界を超える新たな思想を付け加えた著者のあまりにも早い逝去は本当に惜しまれる。慎んでご冥福をお祈りしたい。

このレビューは参考になりましたか?
16 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ib_pata VINE™ メンバー
形式:単行本|Amazonが確認した購入
古くはディドロ『ブーガンヴィル航海記補遺』、新しくは『パパラギ』などのように、初めて西洋文明に接した南海の住人による箴言、豊かな精神性、西洋文化の分析という切り口はいつまでも古びない。

でも、いまや、架空の人物を設定しなくても、リアルでタヒチの老人や南海の酋長ツイアビの言葉を得ることができる。しかも、それを歴史学批判として構成しながら。というのが、『ラディカル・オーラル・ヒストリー』の試み。04年5月、オーストラリアで癌によってお亡くなりになった保苅実さんは、オーストラリアの先住民であるアボリジニのコミュニティに入り、ジミー・マンガヤリ老人と出会い、アポリジニの歴史を語ってもらう。その博士論文の日本語訳を中心したのがこの本。

どこがラディカルかというと、アポリジニによる土地返還要求のキッカケが、コミュニティを訪ねた米ケネディ大統領によって直接、インスパイアされたものであるとか(もちろんそんな事実はない)、白人の牧場が洪水に襲われたのは、ヘビの神が願いを聞いてくれたなどの話をそのまま"歴史"として受け入れる態度にある。そこで問いかけられているのは、近代の歴史家が構成してきた"裁判所が証拠として取り上げることが可能な歴史"が本当に歴史のすべてなのか、という歴史学批判であり、アポリジニたちの口伝による歴史の伝承方法がそれに対する批判の実践になっているということなんだと思う(保苅さんによると「歴史をメンテナンスする」行為)。ジミー・マンガヤリ老人による「道とは東から西へという太陽の動きにある」みたいな説明は多少感動。

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