インドから中近東、東欧を経由してスペインに行き着く音と映像の旅は、ドキュメンタリーともロードムービーともつかない
ロマミュージックとダンスへのオマージュであり、古くからヨーロッパの音楽に影響を与えてきたロマミュージックの原風景だ。
演出された物語も説明的な台詞もなく、音と映像で綴られた内容でありながら、ロマ民族の歴史や文化的側面までをも描いている。
そこにあるのは、現在も続くロマに対する差別や迫害から生まれてきた悲哀であり、叙情あふれるサウンドや人々の姿は、
まさに人の情念から生まれる音楽というものの本質を現していると言っても良いだろう。
出演しているロマミュージックの世界的アーティスト達による演奏も素晴らしい。
また、時間と距離という行程の中で、行く先々の文化と同化しながら進化・発展していったロマミュージックは、
私たちが普段、耳にするヨーロッパ系の音楽のベースにあるエッセンスのひとつであると理解できる。そういった意味では、
ロマミュージックに興味のある人だけではなく、音楽を愛するすべての人々にお勧めしたい作品だ。
機材や録音技術の発展で多様化すると同時に、商業主義優先でその本質を見失いつつある現代の音楽シーンに対するアンチテーゼにさえ思える。