前巻で概要が示された天草家当主争奪戦が始まる。しかし、この顛末は次巻に続くので、天草家編は上中下巻の構成ということだが、天草さんの想いがかなり沸騰しているのと、雅人の心持ちにも何かしらの変化を見せていることに面白味のある第8巻だった。恥じらいを覚えたキチの心境も変化しているオマケ付きである。
前巻から俄然出張ってきた『
いぬかみっ!』の世界観だが、今回は仮名史郎が前半でフル出場しているのに加えて「川平家」といった言葉がはっきりと書かれており、なんと「犬神使い」まで出てきている。何か思惑があって争奪戦に参加しているようだが、これが『
いぬかみっ!あんそろじ〜』の外伝小説に出てくる名門一族だったりする。スピンアウト的な観点からすれば妥当なところかもしれないが、見方によっては通なチョイスとも言える。しかも、争奪戦にいろいろと可笑しなルールを設けて面白くしているところが実に有沢作品らしいと思った。
ほのぼのとした“雅人ハーレム”の様子を綴って読み手を軽く萌えさせる序盤から、天草さんを不当に軽く扱う部分に不快な腹立たしさを覚えるものの、雅人の言動が代弁してくれる中盤を経た争奪戦のバトルでは、雅人の凄みと共に覚醒の予兆まで見せつつ最後に「あんたこそ無敵の最強だろ?」と言いたくなる部外者まで登場させる展開に終始引き込まれる面白さがあった。キチも気になるが、次巻での“モンスター”の活躍がどのように作用するのか楽しみで仕方がない(エピローグのタイトルが笑える)。
しかし、それにしても天草さんの守り刀たる通の浮かばれなさが少し不憫になるくらいだが、もしかしたら、天草さんが雅人の争奪戦に敗れた時のために配置されているのかな?と、ふと思った。個人的には天草さんに頑張ってほしい面もあるが、仮にそうなった時に通の真の役割があるのかな?そこで通は報われるのかな?みたいな気がしないでもなく……。