誰もが家族に認められ、愛され、幸せに満たされて生きたいと願っている。けれど、「僕」という息子には、なぜかそのアタリマエの幸福がゆるされない。理由は永遠にわからないまま、「僕」の冒険物語がはじまる……。家に徘徊する謎の妖怪アレ(兄?)や、明確な虐待や葛藤こそないけれど、「僕」に過保護なようでいて冷淡な父母、恋人同士のように仲の良かった姉との別れ。施設での生活を経て、自分を拾ってくれたヘンな上司や、新しい恋人と共に疑似家族的な関係を結ぶも「僕」の周りに起こる出来事はいつも奇妙に残酷なことばかりで…
一体、家族って何だろう? 家族から離れて生きているはずの「僕」なのに、ずっと呪われたファミリーの絆に追いかけられている主人公の心理がリアル。悲しく切なくて、最後は希望がちょっぴり。
各章は独立した短編としても読め、その完成度の高さには驚きます。特に、冒頭の『畳の兄』と、ホラー色の強い『次の奴が棲む町』が印象的。ファンタジー小説と言っても、ラテンアメリカ文学っぽい抽象度的なノリなので、好き嫌いは別れるでしょうが、私は日本にもこういう小説があるんだなーと素直に感心してしまいました。