ラテンアメリカでは、コロンブスによる“発見”以降の100年間で、
スペイン人のもたらした暴力と疫病により、大多数の先住民が命を落とした。
キューバやジャマイカなどのカリブ諸島に至っては、先住民は完全に絶滅して
しまったほどだ。ラテンアメリカ諸国の社会と歴史、民族と文化は、
すべてがこの「真っ暗闇」を出発点にしている。
そんな時代に、スペイン植民活動の暴虐ぶりを真っ向から批判し、
「新世界」をまたに掛けて先住民を守るための活動に奔走したのが、
バルトロメ・デ・ラスカサス司教。言わば、ラテンアメリカにおける
「闇を切り裂く一条の光」、その原点みたいな人だ。
本書は、ラスカサス師の足跡をたどって、現在のラテンアメリカを旅しながら、
考え、感じたことをつづったエッセイ、もしくは紀行文。
論旨の展開も文章表現も、主観に傾きすぎているところが、難と言えば難。
(個人的には、冒頭の一文で「意思を持った暑さ」という表現を目にして、
いきなり先が思いやられてしまった。またこの手のノンフィクションかよ!)
ただ、ラテンアメリカに長く暮らした著者ならではの“実感”には、それなりに
説得力がある。特にグアテマラの項目は、著者自身が近年の政治・社会状況を
つぶさに目撃してきたためか、現代と過去を行きつ戻りつの思索にも納得感あり。
いずれにしても、日本人の著者で、このテーマで、これだけ時間と心身を費やして
書ける人は、あまりいないと思う。ラテンアメリカの歴史や社会に興味のある
人には貴重な1冊。
あと、これは編集の問題かとも思うが、文中、前教皇「ヨハネ・パウロ二世」の名前が
「ヨハネ・パブロ」となっていたり(「ファン・パブロ」とするならまだ分かるが)、
「徳川家」が「徳永家」になっていたり(これは校正ミス)、違和感を覚えるところが
ちらほら。再刷があるなら、修正を検討してほしいです。