ハードボイルドな映画ではありますが、引退して人生を変えたいと願う一匹狼の銃器職人の日常が淡々と描かれ、この上なく地味。ジョージクルーニーが高倉健にだんだん見えてきます。(笑) 派手なアクションを期待すると肩透かしを喰います。
それにしても、全編を通じて殺し屋の苦悩、悲しみ、性、運命がひしひしと伝わってきます。
私には、これほど丹念に作られた『裏社会を生きる男』の映画は久しぶりで、SFX、CGもカーチェイスもない映画で逆に新鮮でした。
セリフは極めて少なく、クルーニーは引退を決意した銃器職人の人間像を、主に身体の動きと顔の表情だけで見事に表現しています。
古い車のギヤ・シャフトやパイプを手に入れて自室で丹念にライフルのサイレンサーを作り上げるジャック。ライフルのバランスの重心を取り、銃弾に水銀を注入、ホローポイント弾を作り上げる。彼のプロフェッショナルな仕事ぶりをストイックに映し出す緊張感溢れるシーンが秀逸。
クルーニー以外の出演者は、(余り有名でない)ヨーロッパ人俳優で占められています。ジャックにカスタム・ライフルの製造を依頼する女性スナイパーのテクラ・クーティンは、タフな暗殺者には見えない北欧系の美しい女性。森の中でライフルの試射をするシーンでの彼女の銃の扱いに暗殺者としての冷酷さとプロフェッショナリズムを感じさせます。対する娼婦のクララに扮するヴィオランテ・ブランドは田舎の純朴な美女でクルーニーと歩く姿は実に絵になる美しさ。二人のヒロインによる陰と陽、洗練と純朴の対比が効いています。
画面に漂う匂いやノワールの世界に浸ればいい映画で、野暮な突っ込みは不要だとは思いますが、気になったことをあえて2、3点あげると、冒頭で恋人(?)を殺してしまう理由や、なぜ主人公が狙われているのかその理由がイマイチわからなかった。また、あんなことがあったのに、なんでいきなり娼婦に入れ込んじゃうのかも理解できませんでしたね。そして、ラストで娼婦のクララは、あの場所までどうやって行ったのだろう???