評者は早慶の関係者であり、このレビューを御覧になる方はその点に留意してお読み戴きたい。
戦争と云う理不尽なもののために青春を取り上げられた上に、命まで奪われる事になった、当時の学徒の苦悩がよく描かれた作品であると思う。ただし、死を前にした学生の心理上の切迫感と云う点に関しては、先輩作品である「英霊たちの応援歌」の方が勝るかも知れない。
早大校歌「都の西北」を慶應義塾側が、慶應義塾第一応援歌「若き血」を早大側が歌い合うエール交換の場面は、本当に感動する。相手校の校歌・応援歌を歌う事が出来るのは、実に早慶の人間くらいのものだろう。これだけ見ても、「早慶」が単なるライバル校同士の関係ではない事が分かる。一方、「海ゆかば」が無いではないかと云う一部の批判があるが、どうしても政治性を持つ歌であるため、製作サイドも悩んだ上での判断であったと考える(「海ゆかば」を作曲した信時潔は、それから三年後に、現在の慶應義塾塾歌(=校歌)の曲作りも担当している。何れも開戦前の事である)。
早慶両校によるエール交換の場面は別にして、いつの時代のどの大学の学生にも降りかかる可能性のある悲劇として御想像戴きたい。現在でも戦争が絶えぬ事を考えれば、一見に値する作品と云えよう。
本作品をプロデュースした奥山和由氏は、あの「226」でも製作を指揮した人物である。奥山氏の名前を見つけた時は意外に思ったものである。
これは、「男たちの大和/YAMATO」を劇場で観ていて、エンディングのスタッフ・ロール中に、あの瀬島龍三の名を見出した時以来の驚きであった。20年の時を経て、職業軍人である青年将校から無名の学徒兵に関心を移した思想上の変遷には個人的に興味を覚えるものである。