まずタイトル。
この作品はその意味を、ある程度理解したうえで
観始めるのが良いかもしれません。
ラストとはLASTではなくLUST(肉欲)。
これは”色”(欲情)であり、そしてコーションはCAUTION(警戒)であり、 ”戒”。
この相容れない二つの言葉が、 この映画を貫くキーワードとなっています。
それを踏まえたうえで端的に内容を述べますと、 トニーレオン演ずる、
抗日組織の弾圧を任務とする孤独な軍人イーと、 未熟な学生から工作員として、
そして”女”として成熟していく タン・ウェイ演ずるワン・チア・チーの
愛欲・情欲を描いたラブサスペンスといえるかと。
ただ、ストーリーや演技はもちろんですが、日本軍支配下の香港・上海という、
荒廃さと妖艶さを併せ持つ都市も、舞台としてこれ以上無く相応しく、
カテゴリーでは収まりきれない、全てに完成度の高い作品となっています。
私が特にこの映画で一番好きなのは、登場人物が投げかける”目”であり。
例えば、後半のやり取り。
冷酷で懐疑の塊だったリーが、料亭で舞うチーに孤独な心を瓦解され、
ついに、宝石屋でチーの手に投げかける優しい視線。
そして心の全てをゆるした瞬間、告白を受けたその”目”。
このくだりだけでも、どうしようもなく心を揺り動かされてしまいます。
そしてそれ以外でも視線だけで物語る場面が非常に多く。
脇役ではありますが、ライが”好き”と公言していたクァンが、
チーと互いに惹かれあうのを気付きながら、
彼らの側に居る、ライのその”目”。
彼女は心のどこかでチーが破滅に向かっていくことを望んでいたような、
そんなはかなげな視線を、劇中、常に漂わせています。
愛憎交じり合う視線が激しく交差しあう濡れ場をふくめ、
どこを切り取っても一つの作品として十分成立している重厚な映画。
私は観終わったあと、深く、大きく息をつかずにいられませんでした。
そしてこういった作品こそ、”映画”と呼びたい。