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12 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
歴史の流れに翻弄される女たちの心情,
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レビュー対象商品: ラスト、コーション 色・戒 (集英社文庫 チ 5-1) (文庫)
この作者張愛玲(アイリーン・チャン)は、祖母が「日清講和条約」の李鴻章の三女、最初の夫は日本の傀儡政権汪兆銘の高官胡蘭成と言うことで、非常に日本とも関係の深い政治家と縁があります。そうしたことを反映したわけではないのでしょうが、日中戦争の終戦前後の様子を描いた4編が収められています。 表題作の「色・戒」は、高官と女スパイの物語ですが、本来なら敵同士である筈の二人がいつの間にか恋心を抱いてゆくと言うものです。 いかにも映画の原作になる作品らしく、エピソードに溢れ、面白い展開をしてゆきます。 ここに収められた4編に共通して描かれているのは、旧式な結婚形態で盲目的に結婚させられた人々です。従って、そのことに対する批判がテーマともいえるかも知れません。 と同時に、ここに書かれている女たちの心情の表現の見事さは、読んでいて唸らされるものがあります。 ただ、どうも中国読みの名前に馴染みが薄いせいか、多数登場する登場人物の人間関係を把握するのに一苦労しました。
10 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
幸せにはなれなくても〜信念を貫き通す女たちの物語。,
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レビュー対象商品: ラスト、コーション 色・戒 (集英社文庫 チ 5-1) (文庫)
本書の映画化を契機に再評価の機運が高まりつつある今は亡き女流中国文学作家チャン女史の秀作4編を収めた短編集です。著者が描く作品の舞台は共産主義国家となったばかりの中国であり、時代色を反映してか勢い暗く陰鬱な内容とならざるを得ないようです。表題作『色、戒(いましめ)』:日本占領下の上海で日本軍傀儡政権のスパイのボス・易に近づき騙して暗殺を図ろうとする若き抗日運動の女スパイ・王佳芝を描きますが、まだ愛の実体を知らない女性が土壇場で男の自分への真剣な愛を感じた瞬間にすべてを投げ出す姿が胸を打ちます。しかし殺るか殺られるかの非情な世界ですので所詮幸福などは望むべくもありません。『愛ゆえに』:両親が離婚し母と暮らす田舎から上海へ働きに出て来た美貌の娘が、幸運にも幼い少女の為の家庭教師の職を得て、その裕福な家の主の美青年と恋に落ちます。しかし突然現われた娘の父親が金の無心から始まって人にあるまじき悪事を繰り返し、続いて病で死を間近にした正妻が家庭に戻って来た時、俄に娘の心中に葛藤が生じます。苦悩と熟慮の末に娘が選んだ決断は目の前の幸福に背を向ける事でした。著者は過去に両親の離婚を経験し、海外へ旅立った母と離れ離れになり父は再婚しましたが、十七歳の頃に帰国した実母と密かに会っていた事が継母に知られて激怒を招き、半年に及んで監禁されるという不幸な体験をされています。こうした彼女の実体験が著作における男女の哀しい運命に影響を与えていると云えるでしょう。作中人物の言葉を借りて中国の一夫多妻制を否定し、離婚によって生じる少女の不幸を慮って身を引く姿、夫と離れて暮らす妻の心労による死などが描かれる物語に著者の人生と愛に対する確固たる信念を感じて、哀しいけれど心が揺さぶられました。
14 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
魅惑的な題材だが,
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レビュー対象商品: ラスト、コーション 色・戒 (集英社文庫 チ 5-1) (文庫)
「オールド上海を舞台に美人スパイと男性高官の虚実入り混じる駆け引きを描いたストーリー」 と書けば、いかにも通俗的でステレオタイプな感触を受けますが それはそれでこの時代に興味を持つ人の耳目を大いに惹きつけるテーマです。 一読しても若く美しい女性スパイの思い詰めた表情や虚無感、 苦みばしった中年高官に漂う色気を描出する筆致は 実に鮮やかかつ華麗で老上海を代表する女性作家の名に恥じません。 だが、個人的にどうもケレン味というか 文章全体に漂う芝居臭さが鼻についてしまい、 あまり好感が持てませんでした。 前述した様に 「女性スパイとターゲットとなる男性のスリリングな駆け引き」 という物語の題材そのものが既にありふれて手垢の付いたものです。 また、「相手を騙す演技をすること」が主人公たちの行動原理である以上、 彼らの言動やそこに付随する内面描写を読んで「芝居臭さ」を感じるのはむしろ当然で それこそを魅力として楽しむのが作者の期待する読み方なのかもしれませんし、 そうした読者も少なからずいるでしょう。 しかし、私には「美人スパイの哀婉な恋」というテーマに作者自身が陶酔し、 書く上での冷静さを失っている様に感じられてなりませんでした。 中篇程度の分量に対して登場人物が多すぎてしかも関係が錯綜しており 一読して把握しづらい点や、 エピソードを詰め込みすぎて本編ではなく粗筋を読んでいる様な感触を覚える点も 小説として高く評価できません。 ともあれ、表題作を含めた四篇の短編に凡百の模倣作を超える壮麗さがあり、 一読に値する短編集であることは事実です。
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