大まかにいえば、1960年代のマイルスは、68年以降のエレクトリック・マイルスを除けば、65年を境に前半がアグレッシブなライブ、後半がスタジオでのオリジナル中心のスタティックな演奏というふうに分けられる。唯一例外は、65年のプラクド・ニッケルにおけるウエイン・ショーターがフィーチャーされたライブの迫力に驚かされたのだが、このヨーロッパでのライブ演奏は1967年という驚くべきクロニクルとなっており、まさに未知のゾーンでのマイルス・クインテットとの邂逅に胸がときめいた。曲目もESPやマイルス・スマイルズからのオリジナルもあれば、50年代後半から60年代前半にかけてのレパートリーであるラウンド・ミッドナイトやOn Green Dolphin Streetなどもあり、これまでのマイルス観が覆されるような治外法権的ライブである。プラクド・ニッケルのショーターやマイルスは過激でフリーキーなイメージが強く、演奏も全体的に激しく、荒れた内容であるのに対し、本作のライブは、まるで60年代前半のリンカーン・センター(フォア・アンド・モア)やパリ(イン・ヨーロッパ)のライブ・レコーディングを髣髴とさせるまとまりの良さがある。それはマイルスやショーターがことのほか快調なのが、要因だといえるが、リズムセクションも完成度が高く、ショーター参加直後のバランスの悪さがない。特にハービー・ハンコックのピアノが凄い。アジテーションやフットプリンツでのソロはチック・コリアやキース・ジャレット顔負けの高速フィンガー・ワークがこともなげに披露されている。ディスコグラフィーの上では、マイルスのこのようなライブ・レコ−ディングの存在は知っていたものの、長らくマイルスの定番クロニクルになじんできた者にとって、実際1967年のこの演奏は、突然昔の恋人に思いがけず出合った時のようなときめき感に襲われるに違いない。つい最近、ジミー・コブとエディ・ヘンダーソンのマイルス・トリビュート・ツアーの生ライブを聴いたが、このアルバムの興奮と相まって、マイルスの素晴らしさを改めて感じた次第である。