全キャリアを俯瞰しても名作として君臨するであろう『Black Ice』アルバムの大成功を受けての、恐らく最後になるであろうワールドツアーの終盤に、なんと13年ぶりとなるアルゼンチンはブエノスアイレスへ乗り込んでシューティングした映像作品。
ボーナス映像(オープニングのアニメーションのノーカット版及び、ドキュメンタリー)も彼ららしく、ファンの想いを汲んだ、非常に良質なもの。
しかし、本作の真価は、その映像そのものにある。
ボン・スコット期では、間違いなく「Let There Be Rock」が最高だろうと思うが、ブライアン・ジョンソン期は、ドニントン公演はドラマーがオリジナルのフィル・ラッドではないのでグルーヴ感は少し違うし、スペイン公演を収めた「No Bull」やドイツの「Stiff Upper Lip」ツアーのライヴDVDも、演奏と観客のバランスでいうと、甲乙つけがたい、という感じだった。
そのモヤモヤは本作で解消される。なにせ、熱狂的な国民性の国だ。もう、1曲目から最後まで、男も女も、老いも若きも、ハッド・バンギングでは飽き足らず、飛び上がるわ、服を脱いでぶんまわすわ、大騒ぎ! そしてギターリフを大声で叫び続けるその大音声!フットボール・スタジアムのグランドに、もう寿司詰めで、そのジャンプする人々が前後左右に揺れて行く。へたすると怪我人が出かねないほどの凄まじい光景が画面いっぱいに広がる。
ACDC自身の演奏も、この大熱狂の観客を見て鼓舞されたのか、物凄いパワーで疾走する。
なにせ、数曲では、あの後ノリの魅力あるドラマーのフィル・ラッドのピッチが思わず早くなってしまうほどの乗りである!
セットリストは新作からの数曲を除けば定番中の定番。しかし、とにかく観客の大熱狂とバンドの大熱狂が相互にケミストリーを起こしたとしか言いようがない。
これをロックを言わずして、なんというか!