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穂村弘は、誰もが忘れ去っていた幼少時の素直な高揚を、鮮明に描き出す。デビュー歌集『シンジケート』の代表的な歌に、既にそれは顕われている。
子供よりシンジケートをつくろうよ「壁に向かって手をあげなさい」
秘密基地、犯罪組織といった言葉が持つ、不思議な幼児性。著者はこのように、普段見落としがちな言葉の魅力を、ラインマーカーでチェックしていく。
また、この本はあくまで「Best of Homura Hiroshi」なので、それだけではなく、多様な一面を見せてくれる。
ウェディングドレス屋のショーウィンドウにヘレン・ケラーの無数の指紋
のように「三十一文字の小説家」としての技量を示したり、著者への手紙という形の「手紙魔まみ」では、
完璧な心の平和、ドライアイスに指をつけても平気だったよ
のように無邪気な愛の全能感、そして痛みを描いたりと、他にも紹介しきれないが、微笑ましいものから怖いものまで幅広く収められている。
短歌に興味はあるけど、ちょっと取っ付き辛いなあ……という人にこそお薦めという意味で、まさにベスト盤だと思う。
それに、女性歌人が元気な昨今、同じ男性として、応援したいという気持ちもある。
やっぱり、男性歌人の歌の方が、共感できる点が多いような気もしないではない。
年齢も、ぼくより7つ若いくらいだから、歌人がおじさんになって、自分への悲哀みたいなものがただよっているのを感じてしまう。
そして、甘さも優しさも、女性歌人のそれと、ちょっと違う。
なんか、まっすぐな甘さというか、木製の家具の優しさとでもいうか。
表現力がないので、これ以上、伝えられないが。
でも、力強さ、激しさもあるんですよ。
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