歌や演奏やダンス以上に、ライブ中に見せる岡村靖幸の、そして観客たちの表情が強く印象に残るライブ作品だった。「『青春』という名の列車を慈しむように見送る者」の喪失と諦念と受容の感情がほの見えた。個人的には、彼のそんな表情を(初めて)見れただけでもこのDVDを購入した価値があったように思う。たとえ(当然収録されていると思っていた)代表曲「だいすき」や大円団「Out Of Blue」が入っていなくても。※この2曲は選曲者によって意識的に「削られた」のだろう。最初はアルバム「エチケット」同様、「なんてあざという仕様だろう」と訝ったのだけど、ライブ全編を見終わると、2曲を削った意図が理解できる気がした。選曲者はこの復帰後の初ライブ作品が「完全(完結)版」のような完結した空気を纏ってしまうことを避けたのではなかろうか……これからも続いていく「新生・岡村靖幸」のために。
とくに「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」で見せる岡村の表情は決定的に感動的だ。何度か見直してみたのだが、岡村は泣いているように見える。あの岡村靖幸を泣かせるだけの空気と波動がこの時、たしかに宿っていたのだろう。何度もクローズ・アップされる観客たちの表情。彼女(彼)らは、バックメンバーは、そして岡村靖幸自身、もはやこの曲が「すでに終っている」ことを了解している。この空気感は岡村若かりし頃、そして肥えていた頃のライブにはなかったものだ。そしてすでに終っていることを了解していても、いや、了解しているからこそ、「過ぎ去った青春」の価値を今や「身をもって知っている」彼らは声を張り上げて唄うことができるのだろう。「青春って、1、2、3、JUMP!」
そして間奏、たまりかねたようにギターをかきならす岡村の表情を見ていると、どうしてもこみあげてしまうものがある。岡村は長い期間を経て、ようやく娑婆から戻ってきた。すっかり痩せて、高音を取り戻し、再び上手に踊れるようになって。だが彼の情動(衝動)も、彼をとりまく現実世界も、もはや当時のそれではない、まったく。時は平等に流れ、時代は移り変わり、岡村靖幸は、そして彼を待ち続けていたベイベたちは正しく老いた。それでもかつてと同じように彼の曲を愛し続ける新旧ベイベたちは会場をすっかり埋め尽くし、両手を掲げ、興奮し、泣き、笑い、大声で歌う。岡村靖幸の帰還を待っていた彼ら、彼らを待たせていた岡村靖幸、そしてバンドメンバーたちの気持ちがじょじょに、やがてはすっかり融け合って、理屈じゃ説明できないような感動とグルーヴを生み出す……そんな感動的な「祝祭」。その場に居合わせることのできなかった僕も、素晴らしいライブだと心から思った。