ストーリーがシンプルでわかりやすい。それでいてコクがある。
主人公はとってもひょうきんなおじさん。物語前半ではちょっと軽薄すぎるほど笑いを取りまくる。おいら見ているうちにだんだん慣れてきて「このまま最後までこの調子でもいいのでは」と思うくらい面白かったが、実はこれぜんぶ後半の感動のための布石。
手放しで笑える前半が終わると、物語は一気に暗くなる。陽気な主人公は「ユダヤ人である」という理由で、家族もろとも強制収容所に送られてしまう・・・。が。この辺から観る人の涙が警戒水位に近づいてくる。
前半と後半。それぞれ描かれる情景は、表と裏のように違う。そんなかで主人公の陽気さだけが、最初から最後まで筋金のように貫通している。これが実にまぶしいのだ。誰もがドドンと落ち込みたくなる理不尽な境遇で、ユーモアを放ち続ける主人公がかっこいい。
収容所では、ひとの命や尊厳がとことん粗末に扱われる。ぶち込まれた誰もが父親として無力感に沈んでいるところ、主人公だけはあきらめない。「呪い」に満ち満ちた収容所で、「祝福」をこめた陽気なメッセージを家族に送り続けるのだ。これがすごい威力を発揮する。
別棟に収容されている奥さんには「愛しているよ~」という陽気なメッセージをあの手この手で送り続ける。絶望的な境遇におかれた奥さんは、それを受け取ると、まるで魔法にかけられたように生気をとりもどすのだ。この辺で涙のダムは決壊するぞ。ハンカチを用意しておいてくだされや。
あと、同じ部屋に連れ込んだ幼い息子もいるんだけど、この子がけっして希望を失うことがないように大胆なユーモアを連発する。この子もたいへんいい味を出している。
見るひとの涙を誘う映画って他にもたくさんあると思うけど、これはおいら気に入ったよ。主人公の陽気さがこれでもかこれでもかと観る人を泣かせる。「主人公のひたむきさがせつなくて泣く」っつうだけじゃないのよ。なんつうかこう・・・希望が地の底からモリモリとわいてくるような、感動の涙だよ!!