原著タイトルの『The recursive universe』が示すとおり、本書では再帰的な定義から生成される空間を通し生命、情報、熱力学、自己組織化などを考える。本書で扱われる再帰的な定義はライフゲイムと呼ばれ、直観的には碁盤上での碁石の並べ替えで定義される。ある碁石の近傍に一定以上の碁石があればなにもせず、一定以上の碁石がなければその碁石を取り去る、ただこれだけである.しかし、この単純な定義から驚くほど多様な空間が生成されるのである。
ライフゲイムは1970年のサイエンティフィックアメリカン誌上で紹介されるや大流行し、タイム誌(1974年)が「ライフゲイムの大群が数百万ドルの貴重な計算機資源を浪費している」と苦言を呈するほどであった。ライフゲイムに関する日本語の成書は極めて少なく、本書も品切れが続いていたのだがこのたび待望の新装版が出版された。本書が書かれた1985年(日本語版1990年)のあと、計算機は飛躍的に高速大容量化し、人工生命がブームとなりヒトゲノムが決定された。改めて読み直してみると内容は隔世の感がぬぐえない。新装版は内容についてはまったく手直しがされておらず、フェルマーの定理が未だに未解決の問題となっていたりする。もう少し内容も「新装」しても良かったのではあるまいか。
それでも、やはりライフゲイムは面白い。インターネットを探せばCGIやプログラムが見つかるし、自分でプログラムを書いてもよい。本書を片手にライフゲイムの宇宙を探索されてみてはいかがだろうか?(別役 匝)
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