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商品の説明
内容説明
ゼロ年代の文化の一面を象徴するライトノベルは、どのようなジャンルとして認識されてきて現在の地位を築いたのか。1980年代からゼロ年代までの新聞・雑誌を読み込んで、ライトノベルの「誕生」過程を出版動向や人々の文学/文芸観の変遷を交えて読み解く。
内容(「BOOK」データベースより)
ゼロ年代の文化の一面を象徴するライトノベルは、多くのヒット作を生み出して読者を獲得する一方で、批評の対象として多く論じられてきた。1980年代からゼロ年代までの新聞・雑誌を大量に読み込んで、ライトノベルがどういうジャンルとして認識されていまにいたったのかを、出版動向や文学/文芸観の変遷を交えて読み解く。
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最も参考になったカスタマーレビュー
4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
商品の内容説明の項に、書籍の表紙に書かれている文言がそのまま載っているのですが、それで全て言い尽くされている点が良く、装丁に感心します。
ただタイトルについては、資料を読み込んで「ライトノベルのかたち」を探していくのだから、仮に商業単行本でなく(初出である)論文であったならば『ライトノベルはどこから来たのか』とでもした方が良かったかも知れません。この本を読んで読者にその先を見据えてもらいたいという送り手の期待がタイトルを微妙にずらしているように感じます。
さて、当書は“ライトノベル”と呼ばれるジャンルについて、それがパソコン通信のフォーラムでネーミングされたところからを起点にしています。つまりその前にあったコバルト文庫の少女漫画的な小説や、ソノラマ文庫がアニメのノベライズを行ったりアニメ関係者を起用してティーンズむけに出版した小説は前段階のものとして区別しています。筆者も「言い出せば源氏物語からライトノベルと言えるので……」と定義に苦しんだ点を述べていますが、明白なスタート地点を置いていることでまぎれが少ない点が気持ちよく、この本の美点になっていると思います。
その上で、新聞やコラム、文芸雑誌の批評や作家対談、果ては同種のテーマの他書籍にまで当たって資料をまとめ、流れを作って資料の解説をしていきます。つまりライトノベルについて語られているものを語っていくわけで、ラノベの読後感想や思想といった内側の視点は(作家対談などを除いて)ありません。
論文的には正しいのですが、ここが読者を隔靴掻痒させるところかも知れません。つまりラノベについて語っているのは常に業界関係者なわけで、ラノベに共感を感じてきた、この本の読者になりうる人たちにとっては評論家や編集者が語るラノベとやらに「そういうことじゃねえんだよ」「そんなことはいいんだよ」といった主観的な反発が潜在的にあると思います。この本が“そうじゃない視点”をテーマにしているのですから、そこが仕分けされている点は優秀さを示すものなのですが、読んでいてコレジャナイ感が生まれた場合には、今一度この本のテーマを思い起こさないとせっかくの内容を読み誤る点があるかと考えます。
総じて、ライターや評論家が資料の入り口として当たるには素晴らしい本です。自分で図書館に行って調べる手間と労力を二千円で交換できるのはお買い得です。文章も読みやすく、主観で読んできたライトノベルというものの流れにきちんと骨をつけたいと考える大人の方にもお薦めできます。
ですが、本書で言及されるライトノベル読者、つまり「基礎知識と共有感覚を前提に共感することを目的に本を読む人」にとっては、当誌で語られる“大人の事情として語られるライトノベル”については提示され解説されても共感できる要素が少なくて厳しく、書かれている資料の事実が読み手の真実になっていかない感じがしました。
それはちょっとした矛盾のようにも感じ、残念に思うのですが、これもまたライトノベルの社会的広がりの一端だと捉えるのがいいのかも知れません。こういうきちんとしたものがないジャンルというのもそれはそれで寂しいことですから。
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By DSK
トップ500レビュアー VINE™ メンバー
ライトノベル周辺事情の解説書と言えよう。まだ『ライトノベル』というジャンルも呼称も確立されず、むしろ否定的に捉われていた頃から、2000年代に入ってからの大きなうねり、そして成熟期とされる現在に至るまでを“外側”から纏めている。外側である。なので、時代を彩ったライトノベル作品の中身についてはほとんど触れていない。要するに、本屋の片隅にありながら結構な場所を占拠している、一風変わった装丁の本について、「これは何だろう」から「これはおそらくこういうものなんだ」、そして「これにはこんな魅力があって若者が支持しているようだ」、あるいは「これの市場規模は軽視できないほどなのに文学的に扱いが低いのはナゼ?」、さらには「これが市民権を得るにはどうする?」といった事柄について、関係者及び遠巻きに眺めている人達の言説を網羅している。なので、ライヴ会場の外から中の喧騒を窺っているような、もしくはスポーツを生ではなくTVで観戦しているような距離感がある。面白味に欠けるほど客観的で淡々としているのである。何でかなぁ〜?と思っていたが、これが大学院の修士論文を元にしていることが分かって納得した。資料の羅列とコメントの繰り返しが続く構成は確かに卒業論文的である。
ただ、内容をおさらいした「おわりに」と文末の「あとがき」で本書は急に血の気を帯び、文章に生気が出てくる。書き下ろした箇所であろうことは明白だが、これが皮肉にも本書で言う「文学」と「娯楽」の違いを端的に表しており興味深い。つまり、データを並べて武装した論文調の本文には、例えるならばフォーマルなフランス料理のフルコースであり、肩肘張って“型”に自分を合わせた建前的なぎこちなさがあるのに対し、「おわりに」以降のリラックスした文体には、フルコースを堪能しながらも実は得られなかった満腹感を満たすために思わず立ち寄った屋台のラーメンのような本音が垣間見えるのである。文学的あるいは詩的と称される高尚な束縛から解放され、作者が読者と同じ目線で本音を語ってくるのがライトノベルだと述べているようである。
だとすれば、フルコースとラーメンが、その出自から生い立ち、食す際の動機まで異なりながら両立するように、ライトノベルが今の立ち位置のまま偏見が薄れ、ある程度の理解を得つつ文学的なものと立ち並ぶことが「どこへいく」に対する私見としての回答となるのだがいかがであろう。ただ、ライトノベルには温故知新できるまでの積み上げがまだ乏しいので、もう少し年月が必要か。
16 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
横浜国大の国文学の一柳廣孝先生のところの修士論文らしい。著者はまだ25歳ながら、十分に出版に足る水準の本に仕上がっている。これまでライトノベルについて言及された資料を徹底的に洗い出し、その足跡をまとめようとしている。その焦点となっているのは、ライトノベルそのものではなく、むしろライトノベルという、やたらと売れる奇妙なものの出現に対する周囲のとまどいだ。この問題を、時系列的に対比して論じる。それゆえ、ライトノベルがどういうものか、ということについても、著者の見解ではなく、あくまで、どういうものと言われてきたか、に止めており、やたら独善的な宣言をぶちあげたがる変なマニア崩れの評論家連中より、よほど好感がもてる。
とはいえ、「ゼロ年代」などという表現が示すように、内在的な視点しか持ち合わせていない。言わば、自分の読書遍歴を位置づけ直すもので、研究者的な視点ではない。つまり、自分自身の大きな文化史的な展望なしに「ライトノベル」という言葉が出てくる二次資料に頼ったために、いかにも学生のレポート臭がする。実作品の構造分析も、ほとんどなされていない。このために、ライトノベルの特徴である明確なキャラクター、乾いた断片的文体、時系列の飛躍や平行など、その元となった、アニメとライトノベルをつなぐ輪である双葉社ゲームブックの『ルパン三世』シリーズ(1985-91)や社会思想社のファンタジーゲームブックシリーズのようなものは、ほとんど視野には入ってこなかったようだ。近年のヒット作品以外は、書籍名だけで、とにかく現物を知らない、自分では読んでいない気配が漂っているのが致命的。(人が言及していたら、実際にその本を手に入れて自分で読んで確認するのが、研究の基本中の基本。)
もちろん、一つの本で多くのことを望みすぎるのは酷だ。いずれにせよ、ただ「ライトノベル」という流行語を追うだけでは、ライトノベルの実体が、他人の言葉の間からすり抜けていってしまう。元ゲーム屋、現立命館の米光一成先生が以前にクイックジャパンで試みていたが、つぎには、この本と同じくらいの精度で、きちんと実作品の系譜を明確にすることが期待される。
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