10巻にも及ぶ物語が遂に完結を迎えた。剣の父・半次郎の帰国後は、もはやライトノベルとは呼べないほど重いテーマと向き合う、本格的な小説となった。この世の過酷な現実を甘ったるいユートピアであるラノベ世界に持ち込み、力が全てだと説く半次郎は「資本主義」の象徴であると私は解釈した。作者の本田先生が『電波男』から「恋愛資本主義」との闘いを続けていることを思うと、半次郎との対決は興味深いものであった。
しかし、ラスボスである半次郎よりも強大な敵に日本社会は襲われ、この物語もその影響を受けることになった。八雲が米国に出発した直後に東日本大震災が発生したのだ。半次郎はこう呟く。
「どれほどの暴力と悲惨と血しぶきがスクリーンに映ろうとも、しょせんは作り物だ。現実はこのような生ぬるいものではない。現実は――この世界は、このわしが考えていたよりもはるかに残酷で、はるかに無慈悲だ」
ラノベ世界に半次郎と東日本大震災という、設定をぶち壊すような強敵を取り入れたのが本巻である。ハッピーエンドを迎えるためには、強引な展開にするしかないだろう。事実、強引な展開になったわけであるが、私は読み終えて、これは剣と半次郎父子の物語だったのだなと感じた。剣の母が死んだ時から、全ての悲劇が始まったのだ。八雲もゆうなも片親を亡くしているが、幸せな家庭で育っている。しかし剣と半次郎は愛が大きかった故に強い苦悩を抱え込むことになった。そして剣は10巻もかけて母の愛を取り戻すのであるが、そのシーンは涙なしには読めないほどだ。
少し不満が残ったのは、最強のラスボスかと思われた半次郎があっさり折れてしまった点と、八雲が米国に行ったままで、「大震災後の日本でどう生きればよいのか」という、我々に共通のテーマとは離れている点だ。だが、そのテーマは次回作で取り入れることになるのだろう。