ライトノベルとは何か。近年書店の棚を浸食し始めているその
アニメ画が表紙を飾る、小説ともマンガとも判別つけがたい一
群に、恐れを抱いている年齢層ちょっと高めの書店利用者も多
いのではないか。本書はそんな、ラノベについて全く知らない
「ネクタイびと」に向けて送る、ライトノベル作者(でありかつて
の読者)からの入門書だ。
ライトノベルという名前の由来に始まり、実際に出回っている
人気作品の紹介、ライトノベルにおけるイラストの意味、ライト
ノベルという「手法」について、そして、これからのラノベの展
望と、オーソドックスな構成を取っているといえるだろう。
しかし、この入門書によって気づかされる最も重要なことのひ
とつは、そもそもラノベ=おたくの方程式自体が、自明なもの
ではないのだ。それはライトノベルというネーミング自体がまだ
ない時代にさかのぼるのだけれど、児童文学と文学、その中
間のハイティーンを満足させる面白い小説を書きたい!という
のが、当初の作家の願望だったわけで、そこにオタクだとかア
ニメ画の挿絵だとかは、直接的に関係はなかった。
こういったラノベに通底するリアリズムを、東浩紀が後に「ゲーム
的リアリズム」だとなんだと名付けているのだけれど、同じかつ
てのラノベ人気作家あかほりさとるの新書『
オタク成金』でも
わかるとおり、こういった実作者ならではの素朴な感覚的な
発見というのは、意外と腑に落ちることがある。
ただ残念なことがふたつ。ひとつは冒頭で読者を非ラノベ読者
に限定しているにも関わらず、本文では目の肥えたラノベ読者
への配慮に気をもむあまり、無駄に分量が多くなっているという
こと。ここら辺はオタク文化を論じる本にも通じる。そしてもう一つ、
近代文学以前の娯楽小説とのラノベの親和性をつまびらかに
することに熱中するあまり、気づけばこの本、ラノベ作品からの
引用がまるでないのだ。入門書としては、そこが痛い。