本書は、ロンドン大で経済学修士号取得後、1985年にソロモンに新卒入社し、最盛期から崩壊期へと凋落するソロモンのロンドンオフィスで、3年間債券セールスを勤めた著者による作品です。
私は、ちょうど2008年後半の外資金融の大リストラ〜2008年末のボーナス告知の時期に、本書を読了したのですが、「100年に一度の経済危機などといわれているが、つい25年前にも、まったく同じような思いをした人たちがいて、その時にも2008年の今と同じプロセスでリストラが行われ、またソロモン・ブラザーズという会社が(原因こそ違うにせよ)一夜にして潰れていった」ということを知って、この業界の「中の人」のスタイルは当時からほとんど進化してないな、と強く感じました。
ボーナスの告知に社内が浮き足立ち一喜一憂する姿の描写(「年に一度、神様の前に召しだされて、自分の人間としての値打ちを告げられる」)、リストラ宣告の時に対象者が電話で会議室に呼び出され処刑されていく場の様相、全ては、1985年に著者が経験したときの再現のようでした。平成の当事者として、なんともいえない思いをかみ締めながら、いっきに読み漁りました。
また上記のような”ソロモン失墜”のストーリーだけではなく、現在の「レバレッジ・バブル崩壊」の根源ともいえる財務レバレッジがどのようにして世界市場に広がっていったか、モーゲージを世の中に広めた仕掛け人は誰だったのか、当時の債券セールスの立場から歴史を追って書かれています。例えば、フレディマックやファニーメイが生まれた理由としてソロモンが開発したモーゲージ債に実質的な政府保証をつけて販売したかったため議会に執拗なロビイングを行ったという記述があったり、ジャンクボンドが投資家の間で人気商品となり組成・供給が間に合わない状況下で、ドレクセルのミルケンによって”安定度のごく高い企業の社債をジャンクに変えてしまう方法”として、レバレッジド・バイアウトが編み出された、など、事実であれば目からウロコの記述があります。
筆者が本書を記したのはサブプライム危機など知る由もない遥か25年前ですが、当時の強引な商品開発背景や”客をハメる”セールス手法などは、間違いなく現在のサブプライム危機の遠因となっています。この業界の根底に流れるGreed(欲)の理解と、歴史を繰り返さないための教本として、さくっと読める貴重な一冊です。