1970年代後半のドイツ、広い家へ越してきたお父さん、お母さん、10歳のラウラ、8歳のヤーコプは、お母さんの父親「ヨーンじいちゃん」を呼びよせて暮らしはじめます。せい高のっぽで、染物名人、チェコなまりがきつく、とても活動的なヨーンじいちゃん。ついには、ずっと年下のすてきなおばさんと恋をしますが、卒中で倒れてしまい……。
体も弱り、気難しくなってきたご老人と暮らすということが、二人のきょうだいの目を通して、ユーモラスに、そしてきわめてリアルに描かれます。
まず、ヨーンじいちゃんがとても魅力的。じいちゃんは、壁に貼った、アインシュタインのあの有名な、ベロ出しの写真をさして、「この人は、ひとをからかえる……。こういうことをする自由をちゃんともっとるんだ」と言うのですが、じいちゃん自身、ナチスに抵抗して投獄されていたことがわかってきます。また、頑固で気まぐれで、かなり我がままな人だけれど、「思いやりのある遠慮」という、人間関係に大切な秘密も、ちゃんと心得ています。
そして、なんといっても四人家族がすばらしい。「婿どの」であるお父さんは、変わり者のじいちゃんを煙たがっていても、一家の主として的確な判断をし、時には大人の男として、ひそかにじいちゃんの味方になります。それに、お母さんが、時々じいちゃんを思わず「おとうさん!」と呼ぶ場面には、胸がつかれます。その時、二児の母親は小さな娘になっているのですから。
じいちゃんが卒中で倒れるその瞬間から、在宅介護の日々が書かれた後半では、ぼけや、一人で排泄・入浴できないことなど、避けて通れない問題がリアルに提示され、深く考えさせられます。人が尊厳をもって亡くなるには、回りの人達が、その人に敬意と愛情をもたなくてはならない、ということが、よく伝わってきます。甘えっ子だったヤーコプも、臭さに閉口しながら、下の世話のお手伝いをするほど成長していきます。
このお話は、理想の家族三代を描いた夢物語に思われるかもしれませんが、人が年をとるということの残酷な当たり前さ、その過程を目の前で見ることの大切さが、難しい言葉もなく、字数も少なめの文章で語られています。優れた児童文学のすべてがそうであるように、この本も大人必読の一冊だと思います。