「巡礼」「聖遺物」などいくつかのテーマに分け、中世ヨーロッパ美術について描いた。本書を読んでいると、作品説明が即ち当時の歴史やキリスト教の説明となる。美術が信仰と分かちがたくつながり、その美術観に充ちた市街地設計の中で人々が暮らしていた。ブルージュ、シエナ、スプリトなど中世の構造、建物が残る街で今も人々が暮らしているのを見ると、確かにキリスト教にとらわれた文化ではあったが、ヨーロッパの人々の根底にある「静的な美」が今も人間を引きつけるのだと思う。元々中世が好きではあったが、読んでいると中世の持つ「停滞」「重苦しさ」というイメージより、華やかさを感じた。
美術書なので当たり前ではあるが、図版が非常に多いのがよい。美術はできればオールカラーが良かったのだろうが、写真がないのとは雲泥の違いだ。一品一品について、なじみのない時代・宗教背景を加えつつ紹介しており、仕事の丁寧さも感じる本だった。