本書の副題は「12世紀から18世紀まで」。つまり、封建社会であった中世中期から、王政を経て大衆社会が芽生えんとするくらいまでの、ヨーロッパ美術について書かれております。私見によればヨーロッパが最も面白い時代です。
中世から近世への移行期を、キリスト教史を中心に見ていくならば、中心の潮目は疑いなく「宗教改革」と「反宗教改革」の潮流により出来たものであります。そしてキリスト教(カソリック)美術は、伝統的キリスト教に批判的なプロテスタントの攻撃からの防遏も求められたが故に大きく変容します。有り体にいえば弾丸に晒される聖母、聖人、教皇の権威などを、造型美術で示すことによって擁護する、そういう役割を示すことになります。これは大きな転換点です。
しかしそもそも「美術は(庶民の)教育」(マール)であった頃から考えると、芸術家自我の芽生えや印刷術の発達、新しい時代の宗教感情への対応、などにより、絶えずキリスト教美術は変容し続けて来たのであります。
本書は、以下のような、基本的には時系列に基づいた章立てで、キリスト教美術の変容と発展についてあっさりと捌いていきます。「1 12世紀の宗教美術」「2 13世紀の宗教美術」「'3 中世末期の宗教美術」「4 トレント公会議以降の宗教芸術」。それぞれの章中には時代考察の為の興味深い小テーマ(「巫女」「死の舞踏」など)が掲げられており、ちびちび読むみみっちい読み方にも対応しております。
文章は平易で、上述のように小テーマの集まりのような形式で取っつきやすい上に小導入文なども(著者によって)付加されており、更に訳者による註が充実しております。不案内な読書においては、往々読みながら迷子になる危険があるのですが、本書を読む我々は迷子センターのお世話になる心配は恐らく、ありますまい。
たまたま今は秋ですが、秋の夜長にでもじっくり読みましょう。味わいがありますよ。