本書は難しい経済・財政・金融面での欧州危機の解説本ではありません。現在の欧州ユーロ危機の経済・財政・金融面の解説本としては、ほぼ2010年6月までの状況を扱った白井さゆり氏「
欧州激震」が、本書と重なる、ギリシア、スペイン、イタリア、アイルランド、ドイツの状況他のマクロ経済の状況と各国政府やEUの対策を詳述・分析しており、資料的な解説本として役に立ちます。では、「欧州激震」以降、2010年7月から2011年夏頃までの最新情報を扱っている書籍として二冊読みました。ひとつは白井さゆり氏の続編「
ユーロ・リスク (日経プレミアシリーズ)」(6月出版)、もうひとつが本書です(7月30日出版)。
「ユーロ・リスク」は各国の財政対策が主に述べられている書籍で、最近の新聞と、「欧州激震」の間を埋めてくれます。しかし、「欧州激震」でユーロ化以降の主要指標のグラフや各国状況が語られている為、最近の新聞を査読していれば、「欧州激震」を座右においておけばカバーできそうに思えます。一方本書「ユーロ連鎖危機」は、紀行文的に各国の主要人物や一般会社員、労働者へのインタビューが中心となっており、紀行文的に各国状況が描写され、数値や政策の列挙だけではなく、血と肉を持った社会とひとびとが描かれ、イメージとして頭に入りやすい内容となっています。財政・経済指標は、「欧州激震」を用意しておけばカバーでき、しかも本書は「欧州激震」のその後の2011年6月頃の状況まで扱っています。この点で、「欧州激震」と「ユーロ連鎖危機」は相補的に利用できる書籍だと思えます。
欧州各国は、それぞれ経済力や経済の性格が異なり、一見同質的に見えた危機も、その背景となる理由は様々であることがわかり、産業政策や財政政策の相違があっても、一斉に危機に陥る様相が描き出されています。その状況は、日本のあり方と無縁ではなく、著者は最後に「日本は、ギリシャやポルトガルと、ドイツを足し合わせた国ではないか」と指摘しています。累積債務が多く財政規律の低いギリシャ、無意味な公共事業(意味のある公共事業もある)に補助金をつぎ込んでしまったポルトガル、輸出力のあるドイツ。ユーロ危機から日本は何を学ぶことができるのでしょうか。
ギリシア、スペイン、イタリア、アイルランド、フィンランド、デンマーク、ドイツ、英国、ポルトガルなど多くの国を扱っている為、全体として浅い感は否めませんが、有用なルポルタージュ本だと思いました。