日本経済新聞社の欧州特派員が足で稼いで取材した「ユーロ危機」をめぐる現地報告。文庫版オリジナルである。
本書を通読しての感想は、結局のところ共通通貨ユーロとは、かつてのドイツマルクの実質的な適用範囲を欧州全域まで拡大したものであり、一番メリットを享受したのが、ドイツそのものであったということだ。その意味では、本書がドイツに多くのページを割いていることは大きな意味がある。EUは、政治大国のフランスと経済大国のドイツが中核国として実質的に仕切ってきたわけだが、経済的なパワーを背景にドイツの政治的発言力がさらに増しているということが手に取るようにわかった。
しかしながら思うのは、加盟国の国内財政問題に介入できないEUの統治機構の弱さとスピードの遅さだ。これでは、国連並といわれても仕方あるまい。
さらに本書の重要な指摘は、EU域内での不均衡の拡大についてである。国際競争力をもつドイツ、オランダ、フィンランドといった国々と、国際競争力に劣るギリシア、ポルトガル、スペインといった南欧の国々との域内南北格差。とくに、ポルトガルがさらに衰退する可能性の岐路にたっているという記述を読むと、他国のことながら暗澹(あんたん)とした気持ちになる。若者に夢のない国として、母国に見切りをつける動きがでているらしいのだ。
また、欧州内部のユーロ圏と非ユーロ圏との関係は、非ユーロ圏の英国やスウェーデンのスタンスを知ることの意味を教えてくれる。EUに加盟すらしないスイス、ノルウェーについての記述がないのが残念だが。また、EU加盟準備中の中東欧諸国の動向についても興味深い。ユーロに加盟することのメリットとデメリットを慎重に考えなくてはならない状況になっているからだ。
日本経済新聞社=編の本は、いつものことだが単独執筆ではなく、複数の記者が書いた新聞記事の再編集なので、あまり読みやすいとはいえない。
とはいえ、ドキュメントとしての強みは、現地に取材網をもっている経済紙ならではのものである。読者が知りたいことにはかゆいこところまで答えてくれる、過不足ない記述となっているといえよう。