資源開発などビジネスでは注目度が高いが、日本人には疎い内陸アジアの情勢をリポートする。本書では、中央アジア5国や上海協力機構の基礎情報のほか、著者の現地取材が多く、充実している……感じもするのだが、読むにはやや残念な点が多かった。
全体的に現地取材から出版までのタイムラグが長すぎる。石油に沸く西シベリアの油田基地の街への取材が2008年、西安からシルクロードの鉄道を経由して、西部大開発が続くウズベキスタン・アルマトイへの取材旅行が2007年夏で、国境が画定されたハバロフスク国境地帯の取材が4年前の2006年夏。「今、沸き立つ地域で何が起きているか」(表紙帯より)をテーマとする本なのに、取材から出版までの間に、ウイグル暴動、原油価格暴落など変動が多すぎて、とても「今」を伝えるものにはなっていない(実際ロシアの街では取材数ヶ月後に「月給が半分になった」というメールが著者の元に届いたという)。西シベリアやウイグルの記述は「当時の」と注釈をつけた方がいいような感じだ。書いたらすぐに活字にするか、この1年の間に再取材すべきだったと思う。
そして、もう1点が「変動」というテーマが漠然としていて、記述にまとまりを欠く。著者も言うとおり、「全体像がすっきりしない」からこそ、中央アジアの見取り図を読者に作ってほしかったのだが、ルポとデータ紹介がごちゃごちゃと混ざっていて、内容にとりとめのない感じがした。ルポで「油田が…」「担ぎ屋が…」と言われても、全体像が見えない。最初で鳥瞰的にデータを紹介した後、各地では…という流れにするなりした方がよかったのではないか。
書いてある内容の1つ1つ自体はまあまあ読めるだけに惜しい。しかし、巻末の石油開発戦略など鳥瞰的データはある程度参考になる。