著者は本書から3年後に
なぜ戦争は終わらないか―ユーゴ問題で民族・紛争・国際政治を考えるという似た趣旨の書籍を出しており、同書のレビューでは、「なぜ戦争は終わらないか」ということについて興味を持っていたので購入したが、内容が大分異なっていた、との記載があります。私も本書にはユーゴ紛争長期化の理由を期待して読んだのですが、この点についてはあまり明確ではありません。寧ろ、91年から95年までのユーゴ内戦通史として役に立ちました。推し量るに、ソ連解体により政策変更に向かうEU諸国と国連、米国に翻弄されたのが長期化の原因だと言いたいのかも知れません。
本書には分析が浅い部分や肝心な部分の掘り下げが無い箇所も散見され(ゲンシャーが何故突然辞任したのか*1、米国が何故突然セルビア制裁一辺倒に態度を変えたのか、など)、古書か図書館利用が丁度良い作品かと思いますが、役に立った部分も結構ありました。
・もともとソ連とは一線を画していた為、冷戦終了による東欧・ソ連の兵器削減にユーゴは含まれず、大量の兵器が分裂後の各国に残った。
・ユーゴ構成各国内は、それぞれ他国民族を抱えていたが、各民族の合意や順番制などで内政を進めてきており、欧米諸国の独立承認の条件である、「普通選挙、国境変更不可」の単純適用は馴染まなかった。
などは参考になりました(私が無知だっただけだけど)。作者が予言しているわけではありませんが、米国主導のNATOが国連とは独自に動くという、後のイラクでの”多国籍軍”への重大な分岐点となった経緯を描いてる点でも参考になりました。巻末のデイトン合意の要旨訳や、98年8月時点のユーゴ戦争犯罪容疑者一覧表も有用でした。
*1 Wikiにはゲンシャー辞任理由を健康上とありますが、本書を読んでいる限り、いくらなんでもこのタイミングでそれは無いだろう、と思います。その後急病になったりしたのならともかく、未だご健在ですし。隠れた意図を感じます。