ユンディ・リがDGに残したショパン録音からの選集。
小品でも大曲でも、茫洋として計り知れない規格外のスケールを感じさせる。ノクターン9-2などは有名曲だけに、よほどの才能とセンスがなければ音楽として成立すらしない難曲なのだが、ここまで聴かせる演奏はなかなかないだろう。最後のソナタも、古今の名演を凌ぐ素晴らしい出来で、彼の音楽的感性の豊かさを実感できる。
だが、「ベスト」盤に付きものの異論は本盤にも該当する。収録時間の関係か、ショパン・コンクールでも弾いた「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」の名演を収録しなかったのは解せない。有名曲を集めれば売れるという考えでは、演奏家の本当の実力は見えて来ない。彼のような大器には、相応の選曲と曲順を考えるべきだろう。
今後の活躍が期待される、本当に実力のある人だけに、色物際物的な売り方はもうやめてほしい。移籍したEMIでは「ノクターン全集」という超ど級のアルバムをリリースしているが、この対極的なやり方が今後どうなるか。