C.G.ユング博士はその論文はけっして読者にわかりやすいことを配慮していなかった。分かる人なら分かると言う世界であり読者の資質を問われる。であるからその学派(著者は学派が本当にあるのかの主題も投げかける)の形成には非常に長い時が必用であった。著者であるU.K.エセックス大学のA.サミュエルズ教授は、難解なユングの端緒から現在のユンギアングループの考え方まで幅広く網羅ししかも全ての章が簡潔でわかりやすく、特に各主題についてC.G.ユング老子が何を伝えたかったのかを実に見事に体系づけて語ってくれている。わたしは学術研究用に原著を購入しているが、日本語の訳も非常に上質でたすかる。ユング初心者にはそれなりに敷居が高いので、河合隼雄先生の「ユング心理学入門」を読んでからトライするのも手かもしれない。しかし、近年までにこれだけの包括的に体系立った論が展開されたことはなくA.サミュエルズ教授の登場は画期的なある種の事件である。わたしは心から尊敬する。