たくさんの著者によって書かれていて、分量、質ともにかなりバラバラです。
明らかに専門外の人による戯言的な文章がありつつも、一応、SF、ミステリー、ジェンダーなど多角的に考察するように作られていて、編集の姿勢には共感を覚えます。
そのような中で一番光っていたのが、池田純一「情報統合思念体の驚愕」です。
まず、「ハルヒ」の受容を、ネット・映像・原作の3つに腑分けして、「ハルヒ」ブームのきっかけとなったアニメに焦点を当てる。アニメ版は、原作にランダムアクセスするように、原作の順番を変えて放映された(アニメによる原作の「翻案」)。それは、「消失」から遡って、情報統合思念体のインターフェイスである長門(という「情報」)が、その万能の力を封印して人間へと近づくという、言わば長門がヒロインになる物語であるという。
アニメによって原作の「情報」(ランダムアクセス、長門)にフォーカスを当てて作られた「憂鬱」から「消失」以降、主題として置き換わる(ように読めるようになる)のは朝比奈さんを中心とした「時間」の物語となる。何でも有りの長門の力が人間化により抑制されることで、不可避的に、やりなおすことができない過去から未来へと流れる「現在」の時間が意識されるようになる。
ここからが読み応えがあるのだが、時間移動として最近ではまどまぎなど、テーマになりやすい「ループもの」がある。東氏の『ゲーム的リアリズム』においても主眼において語られていたもの。
そのループからの脱出というテーマは物語としての面白さとは裏腹に、飽きが来やすいものであり、その飽きを回避する方策としてとられるのが……、と物語類型論の視点から、「ループもの」の特質を鮮やかに指摘する。
この内容は、ぜひ読んで欲しいと思います。お見事、という感じで、この1本のために買ったとしても、そんなに損はしないのではないかと。いや、どうかな…。