ユナイテッド93にはいろいろな説があるのは、911テロに詳しい方ならわかっていただけるだろう。実際は抵抗した乗客はコクピットを占拠できなかったとか、米軍に撃墜されたとか。
従って、この映画が『真実』かどうかはわからない。わかっているのは機内から携帯電話で話した遺族達の証言が主に元になっているに過ぎず、機内での描写はほとんどが想像上のものでしかない。もちろん私自信もそういったある程度の予備知識はあった上で鑑賞した。
だが・・・
管制塔等の描写を交えながら客観的に進んでいた映画のストーリーに徐々に引き込まれ、まるで観客自身もユナイテッド93の乗客だと錯覚させられるほどの恐怖に陥るのである。
また、この映画ではイスラム過激派を悪者としても描いていない。あくまで彼らも一個の人格として表現され、被害者と同様人間であるとしている。乗っ取るまでの緊迫感に脂汗を流し、コーランを唱えるテロリスト・・・それもまた恐怖を煽る。
人が考え、人が起した事件。それを人が見、人が阻止しようとする。
画面の隅々に描かれた全ての人間模様。人間群像劇。
生きようとする人間、死をかけて任務を遂げようとする人間。
その両者が見事にコントラストとして観る者の心を揺さぶる。
見終わった後には、何も言葉はでなかった。
悲しみなどといった陳腐な表現すらできない。この映画にはそういった力がみなぎっている。間違いなく2006年最恐の映画である。